US PR&マーケティング通信

アメリカ在中のライターがインターネットの活用例を中心に現地PR業界の最新動向をレポート。

次世代スパムとブログの情報開示議論

2006年12月07日

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顧客との直接対話や口コミマーケティングの手段としてブログに取り組む企業が増える中、ブログに対する企業の倫理規定のあり方が注目されている。ブロゴスフィアと呼ばれるブログ世界全体を舞台に、企業を中心に情報開示を柱とする倫理的自主規制の動きが進む一方で、ブログの黎明を支えた独立系ブロガーたちによる既存勢力の影響力拡大への反発は強い。企業は、ブログの自由・独立性の尊重と倫理的責任との狭間で対応を迫られている。

―次世代スパム?

 テクノラティ(Technorati)の創業者、シフリー氏が定期的に公表するブログ統計データ最新版(2006年10月)によると、同社がトラックするブログの数は5700万件を超え、230日に倍増の勢いで増えている。ソーシャルテキスト(Socialtext)のメイフィールド氏とワイヤード・マガジンのアンダーソン氏が主催するフォーチュン500企業のブログ開設状況に関するウィキ(Wiki)によると、従業員が企業や製品について書き込みする公開ブログを運営する企業は40社で、全体の8%だった(2006年10月)。ブログ運営企業は数こそ少ないが、1年前に比べて倍増した。企業ブログの運営以外にも、自社サービスや製品に好意的な意見を書かせるための有力ブロガーに対する働きかけも、経済的・時間的に増えている。

 企業によるブログ投資熱の拡大を反映し、ブログの情報開示議論も緊張感を帯びてきた。プレスリリースや企業のホームページの情報は、誰が、何の目的で作成、発信するものであるかは明白だ。しかし、匿名性の高いブログでは、それらは必ずしも明確でなく、読み手が無意識のうちに情報操作に巻き込まれる可能性がある。例えば、ある製品に関する評価も、それがブロガーの本当の「意見」なのか、それとも企業がマーケティング活動の一環として無償、または有償で書かせた「やらせ」、あるいはスパム(迷惑)メールならぬ「スパムブログ」なのかなど、読み手には判断が難しい。

―架空ブログ事件

 最近の情報開示議論に脚光を当てるきっかけになったのが、小売り大手ウォールマート・ストアーズの「架空ブログ事件」だった。問題のブログは、全米のウォールマートの駐車場を寝床に、レクリエーショナル・ビークル車で旅をする二人組みの様子を綴ったものだった。しかし、後に二人組みの旅費をウォールマートの顧客や活動家による市民団体ワーキング・ファミリーズ・フォー・ウォールマート(Working Families for Wal-Mart)が提供していることが判明。さらに、この団体はウォールマートの企業イメージ向上のために作られ、ブログ自体も同社のPR会社エデルマン(Edelman)がデザインしていたことがわかり、これらをブログで開示していなかったことが問題になった。

 エデルマンのリチャード・エデルマン最高経営責任者(CEO)は10月、自らのブログで情報公開に問題があったことを認め、「100%我々(エデルマン)に責任がある」と謝罪した。

―有償ブロガーの登場

 やらせブログが問題になる一方で、企業とブロガーを仲介し、ブロガーに有償でサービスや商品に好意的な意見を書かせる、新手のオンライン広告サービスが台頭している。ブロガーにブランド、製品、企業について評価を書かせ、1件あたり10ドル程度を支払う仕組み。企業はてっとり早く口コミで情報を流通できる。ペイパーポスト(PayPerPost)など新興企業を中心にすでに数社がサービスを提供しているが、ブログ、あるいはブロガーの自由と独立性を損ない倫理的にも問題があるなどとして、サービスには批判も多い。

―業界自主規制の動き

 約300社が加盟する口コミマーケティングの業界団体、口コミマーケティング協会(WOMMA)は、11月半ばまでに倫理規定の草案を公開した。「倫理査定ツール」「ブロガーとの倫理的コンタクトに関する指針」「倫理規定採用ツールキット」など複数のプログラムからなり、例えば倫理査定ツールでは、マーケターを対象に、非倫理的口コミマーケティングを特定するための20の質問を用意。倫理規定ツールキットでは、サンプルレターや契約書など、企業による社内倫理規定の作成を支援するための様々な文書を集めた。
 コンピュータ大手デルは、WOMMAの倫理規定に準拠した独自の倫理規定を発表。従業員や代理人に対し、すべてのコミュニケーションにおいてデルとの関係を開示すること(情報の透明性)、嘘や誤った情報を故意に流通しないこと(情報の正確性)、不法行為、または企業倫理、プライバシーポリシーなどに違反する行為をしないこと(倫理的行動)、企業機密情報を守ること(情報保護)、従業員がポリシーに違反した場合はこれに適切に対処すること(施行と規律)について詳細を定めた。
 ペイパーポストも情報開示や透明性に関する意識を高め、問題を議論するためのサイトを開設。ブロガーに利用と情報開示ポリシーの作成を呼びかけている。

フォーチュン500企業のブログ開設状況に関するウィキ(Fortune 500 Business Blogging Wiki)
http://www.socialtext.net/bizblogs/index.cgi

エデルマンのリチャード・エデルマン最高経営責任者(CEO)のブログ
http://www.edelman.com/speak_up/blog/

ペイパーポスト(PayPerPost)
http://www.payperpost.com/

口コミマーケティング協会(Word of Mouth Marketing Association)
http://www.womma.org/

■ ライター : 大村智子(ニューヨーク在住)

 

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