US PR&マーケティング通信

アメリカ在中のライターがインターネットの活用例を中心に現地PR業界の最新動向をレポート。

ハリケーン来襲で米国政府の危機管理

2005年09月15日

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 多くの人命を奪った大型ハリケーン「カトリーナ」が米国南部を直撃してから約2週間が経ち、被災者救済と被災地の復旧が急ピッチで進められている。同時に、米経済に及ぼす被害総額が1000億ドル超とも予想される「米国の歴史上、最悪の自然災害」は、非難の矛先が連邦政府の初動の遅れに集中しつつある。2001年の同時多発テロ以降、危機管理を重視してきたブッシュ政権だが、そのシステムの真価が今、試されようとしている。


―「危機管理の手本」だったはずが。
 「われわれ市民は、ブッシュ政権に3日以上も放置された」――。ルイジアナ州の地元有力紙は、カトリーナの来襲を受けて間もなくのある日、紙面でブッシュ政権の対応の遅れを厳しく非難した。この記事が出る頃には、テレビや新聞の報道を通じて、政府の対応のまずさは、すでに全米に伝えられていた。洪水を逃れた人たちが、緊急避難場所に指定された屋内球戯場にようやくたどり着いた後で、水や食べ物、そして医療ケアも与えられず亡くなっていく惨状は、「強いアメリカ」のイメージとはかけ離れたもので、米国民の心に強く刻まれた。

 ハリケーンが再上陸した直後の州、地方都市、そして連邦政府の対応が、ここに来て米国メディアの取材で次々と明らかにされ、災害に弱い通信インフラの存在や、官僚的システムの弊害が浮かび上がっている。州や地方自治体政府にハリケーンの脅威に対する認識不足があり、準備の遅れや指揮系統に混乱があったことは否めないが、特に批判の矢面に立たされているのが、国土安全保障省の内部組織の1つ、連邦緊急事態管理局(FEMA)だ。

 災害対策は、基本的に地方自治体政府の管理下におかれているが、今回のハリケーンのように連邦政府の介入が必要な大規模な災害が起こった時は、FEMAが連邦省庁、州・地方自治体政府、そして非営利団体など民間組織の間に入り、それぞれの活動の調整役として機能する。最近では、昨年のハリケーン・シーズンに官民一体の救援活動を主導した。FEMAは米国民の間でも認知度が高く、「危機管理の手本」として外国政府から研究対象にされたこともあるなど、その働きは高く評価されてきた。


―名ばかりの防災司令塔
 そのFEMAが、今回は事前の被害予測、州・地方自治体政府との連携、準備、救済活動にいたる全ての面で対応が後手に回り、機能しなかった。ブッシュ政権はハリケーンから約10日後、現場で指揮を取っていたFEMAのブラウン長官を事実上更迭した。

 FEMAはなぜ機能しなかったのか。FEMAは2001年の同時多発テロ後、8省庁22政府機関を束ねて発足された国土安全保障省に統合された。これによって、従来独立機関だったFEMAは巨大組織の下に組み込まれ、さらにブッシュ大統領の肝入りで、災害対策とはあまり関わりの無い人物がトップに登用され始めた。ブラウン長官にいたっては、経歴詐称の疑いが報道されている。また、予算と人員の大半がテロ対策に取られてしまい、「名ばかりの防災司令塔」になってしまったことが、内部告発によって指摘されている。

 土地の80%が浸水し最も被害の大きかったニューオリンズ市と、ルイジアナ州、FEMAは、現在も初動の遅れをめぐる責任を互いに擦り付け合い、ぎくしゃくした関係を続けている。FEMAに支援を要請したが、タイムリーに協力を得られなかった、と州・地方自治体政府が批判すれば、具体的、かつ正式な要請は受けていない、とFEMAが反論する。州・地方自治体政府から要請がない限り、協力の準備は出てきていても、連邦政府としては動きが取れない。

 災害の混乱の中、旧態然とした通信システムが使い物にならなくなり、関係機関間でコミュニケーションが断絶されたことも、その後の調査でわかっている。同時多発テロの教訓から、地方自治体政府は緊急時通信インフラの確立に力を入れてきたが、それも今回は生かされなかったようだ。米議会は政府の対応の遅れを問題視し、原因究明のための調査を行うことを決めており、危機管理システム全体のゆがみは、いずれ明らかにされるだろう。


―支持率は過去最低に
ブッシュ大統領の支持率は、カトリーナ来襲後に行われたあらゆる調査で過去最低を記録している。ニューズウィークが10日まとめた世論調査では、支持率は38%に低下した。議会内に大統領の対応を批判する声は多く、ブッシュ政権は今後、厳しい対応を迫られることになりそうだ。

参考ウェブサイト:
連邦緊急事態管理局(FEMA)

FEMAのカトリーナ災害対策専用サイト

連邦政府の同災害対策専用サイト
■ ライター : 大村智子(ニューヨーク在住)



 

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