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Web広告に関する米国法規制の現状と違反事例について調べてみました(前編)

公開日:2015年7月2日

こんにちは。ニューズ・ツー・ユー「ネットPR.JP」編集部です。

最近、よく「ステマ」(ステルス・マーケティング)とか「なりすまし」という言葉を耳にしますよね。実際にインターネットでブログや記事を読んでいる際に、「これって本当は広告なんじゃないの?」と疑問を持ったことがある方もいらっしゃるのではないでしょうか。今回、Web広告に関する米国法規制の現状と米国法規違反事例について調べてみました。「“広告”と“非広告”の境界線はどこなのか?」という疑問への大きなヒントとなる、米国の法規制をご紹介します。

FTC(Federal Trade Commission:米連邦取引委員会)による連邦法規(ガイドライン)の特徴

米国では連邦規制16C.F.R.Part255「広告における推薦及び証言の使用に関するガイドライン」(略して「推薦・証言ガイドライン」)において、推奨と証言に関係する法的な責任や範囲を連邦規則として、法に抵触しないための情報開示や表示方法をきちんと定義されています。

一方、日本ではインターネット、SNS上の広告・宣伝などに関する法規制は「景品表示法」上の問題点と留意事項の公表にとどまっており、具体的な法的責任については今後の課題となっています。

インターネット/ソーシャルメディアを介した広告・宣伝やマーケティングに関する日米法規制比較

口コミ、ブログについて(事業者、広告会社、ブロガーなどの法的責任/情報開示、表示方法)

法規(施行年)・管轄省庁 効力
米国 連邦規則16 C.F.R. Part 255「広告における推薦及び証言の使用に関するガイドライン」(2009年)
FTC(Federal Trade Commission:米連邦取引委員会)参照)連邦法と第三者推奨に関するFAQ(2015年5月改訂)
参照)オンライン広告とマーケティングに関するルール事項
日本 不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)の適用ガイドライン(2011年/改定2012年)
不当景品類及び不当表示防止法
消費者庁

広告・宣伝と第三者・専門家らの推奨について

法規(施行年)・管轄省庁 効力
米国 連邦規則16 C.F.R. Part 255「広告における推薦及び証言の使用に関するガイドライン」(2009年)
日本 景品表示法には該当なし ×

電子メールによる広告・宣伝について(広告・宣伝メール定義/オプトアウト規制/「なりすまし」防止/送信者の表示義務)

法規(施行年)・管轄省庁 効力
米国 連邦規則16 CFR Part 316(CAN-SPAM Act)(2004年/改定2008年)FTC
日本 特定電子メール法(2009年)消費者庁/ 総務省

それではまず、「推薦・証言ガイドライン」が言及する責任者・範囲などの定義についてお話しします。

「推薦・証言ガイドライン」による責任者・範囲などの定義の特徴

まず前提として、この「推薦・証言ガイドライン」は広告・宣伝やマーケティングにおいての第三者の推奨と証言についての解釈を示したものです。そして、その対象は、インターネット、ソーシャルメディア、ブログ、口コミサイト、アフィリエイトなどが挙げられます。つまり、インターネット関係全般が関わってくるガイドラインということになります。

このガイドラインのポイントは 、「第三者の推薦や証言を広告・宣伝、マーケティングで利用する際には、欺瞞的(deceptive)、誤解を招く(misleading)、虚偽の説明(misrepresentation)を避けること。第三者の発言そのものを使うこと。第三者はその商品(サービスなど)の利用をした上で発言しなければならない。」と表記されていることです。

そして、第三者の推薦や証言の具体例としては、以下の3つが挙げられます。

消費者による証言

消費者による証言を使いたい場合は、広告主はそれが代表的な意見であるという根拠を持たなくてはなりません。根拠が明確でない場合には、広告主はその消費者の発言が「典型的でない」、「すべての人が同じ結果を得るわけではない」といった警告文を入れる必要があります。

専門家による証言

専門家による証言を使いたい場合には、専門家の「専門」が広告主の製品分野にとって妥当であり、かつ証言に関する専門分野で資格を持っていることが条件になります。

第三者と広告主の重大な関係(material connection)の開示

第三者が広告主から支払いや無料提供、または何らかの形で対価を得て証言をする場合、第三者と広告主の関係を明確に提示しなくてはなりません。

「推薦・証言ガイドライン」の解釈事例

では「具体的にはインターネット上でどんなケースが問題になるの?」という点について、ここからは具体的なガイドラインの解釈事例をご紹介します。

口コミサイトに関する解釈事例

自社製品の口コミ

「音楽ダウンロード技術に関するメッセージボードがあり、MP3プレーヤーなど再生機器の情報交換がされています。その中で機器メーカーの従業員が自社製品を推奨するメッセージを書き込みました。この場合、その従業員はメッセージボード上で従業員であることを明確にわかるように開示しなくてはなりません。」

― 従業員であることを明示せずに自社製品をアピールした場合、メッセージボード内の中立性が失われ、意図的に自社に有利な情報を流した行為がステマととられてしまいます。

対価が発生しているユーザーのコメント

「企業が自社製品販売サイトでユーザーのコメントを載せていますが、一部のユーザーはその企業の製品を無料で受け取ってコメントしています。その場合、無料商品によるコメントについては、事業者はその情報を開示する必要があります。」

― 対価を受け取ってコメントをしているので、当然そのことを開示しないといけないということです。

ブログとブロガー(YouTube投稿なども含む)に関する解釈事例

ブログでの商品レビュー

「商品を自分で買った消費者や地元スーパーなどから無料サンプルを任意でもらった消費者が、自分個人のブログでその商品についての意見を記載することはガイドラインの証言の範囲ではありません。 ただし、その消費者が、広告主・事業者から商品やその他対価を受け取る場合、または、マーケティングのネットワークグループに参加して、様々な商品を無料で受取り、それらに関する意見を個人ブログに記載する場合には、ガイドラインの対象と、広告主・事業者から無料商品を受け取って記載していることを開示することが必要になります。」

― 事業主から対価を受けてその見返り的に意見や感想をブログ等に記載する場合は、事業主との関係性を開示する必要があるということですね。

広告主とブロガーの相互責任

「スキンケア製品の広告主がブロガーと契約し、広告主は新しいボディーローションについてブロガーに書いてもらうことになりました。その広告主はローションが肌の問題に効果があるとは言っておらず、ブロガーもその点を確認してないのに、ブロガーはローションが湿疹を治すと書き、湿疹の問題のあるブログ読者にそのローションを推薦しました。この場合、ブロガーも広告主も欺瞞的、かつ根拠のない説明をした責任を負う対象になります。さらに、ブロガーはブログレビューの対価をうけていることを明確に開示していないとその責任も負うことになります。」

― このケースは、契約したブロガーがもともと商品自体の持っていない効果をアピールしたことに関して、広告主とブロガー両方に責任が発生した事例です。広告主は契約したブロガーの記事の確認を行う必要があり、ブロガーも対価を受けていることを開示せず、根拠のない説明をした責任が問われます。

無料体験、無料借用後のブログ投稿

「自分で支払わないでレストランの評価を個人ブログで書く場合、その事実を開示しなくてはなりません。また、商品を無料で受け取り、返却する場合でも、商品によってはその事実を開示するべきです。例えば長期に自動車をメーカーやディーラーなどから無料で借りた後、その自動車についてブログに記載する場合には、無料借用の事実を開示するべきです。」

― 無料で食事をさせてもらったり、何かを借りて使用させてもらったりしてから、それに関するレビューや感想をブログに記載する場合は、無料で試したというバックグラウンドをしっかり明示しなくてはならないということですね。

専門家や有名人に関する解釈事例

「専門家や有名人が会社のスポークスマンという場合、通常のメディアにおける広告やトークショーでの証言などと同様に、その人のブログやウェブサイトにおける証言もガイドラインの対象となります。また、専門家や有名人が、Twitterなどでツイートする場合、ある商品のスポークスマンであるという事実を多くの人が知っている場合は、ツイートのたびに広告主との関係を開示する必要はありませんが、周知のことかどうか判断がつきにくい場合には、開示することが望まれます。一般的にはADやsponsoredといれることが推奨されます。」

― 会社のスポークスマンを務める専門家や有名人は、常に注意して発言しなくてはならないということですね。

ソーシャルメディアにおける証言に関する解釈事例

ソーシャルメディア上での商品レビュー

「ソーシャルメディア上でも自分で買った商品や無償で入手したものにコメントや写真を載せることに対しては、ガイドラインの適用はありません。ただし、スポンサーのあるキャンペーンや対価がある場合、または将来の購入割引といった関係があれば、その事実を開示するのが適切です。」

― ソーシャルメディア上での書き込みも対価がある場合にはブログと同様にガイドラインが適用されるということですね。

Like(いいね!)ボタンの問題

「広告主が消費者にFacebookでLikeボタン(いいね!ボタン)を促すインセンティブを提供するのは問題があります。また、存在しない人や商品を使ったことが無い人が、Like(いいね!)をするのは人を騙す行為でありで、そうした偽りのLike(いいね!)をした消費者も広告主も法的責任の対象となります。」

― これはなかなか難しい問題だと思いますし、規制するのも大変だとは思います。しかし、要するにサクラの「いいね!」は規制されますよ!(ないね!)ということですね。

事業者がPR会社にソーシャルメディア運営を代行してもらうケース

「企業がPR会社を使ってソーシャルメディアマーケティングを展開しています。その場合でも、企業はその代理者(この場合はPR会社)がすることに法的責任があります。企業は、PR会社がソーシャルメディアネットワークのメンバーを指導し、モニターする適切なプログラムを持っていることを確認するべきです。また企業は、そうした運営とモニタリングがなされているかを定期的に報告させるべきです。」

― 企業はPR会社にソーシャルメディアの運営を任せたからといってすべてOK!というわけではなく、そのPR会社がおこなうことにも法的責任を負うということですね。公正な運営とチェック体制が重要だということです。

情報開示の定義、推奨される開示方法について

FTC (Federal Trade Commission:米連邦取引委員会)は2013年3月「comDisclosures:オンライン広告上で効果的に情報開示する方法」を発表しました。この文書では第三者と広告主の重大な関係(material connections)の明確な開示方法などを詳細に説明しています。

「推薦・証言ガイドライン」の違反に対する罰則

次にガイドラインに抵触した場合どうなるか、ですが、実は「推薦・証言ガイドライン」そのものには、違反に対する民事罰則はありません。しかし、ガイドラインを逸した行為があれば、FTC法(15 U.S.C. §§ 41-58)が適用され、FTCが「欺瞞的か不当な行為や慣習(deceptive and unfair acts or practices)」と判断すると、FTCは「審決→審判手続き→命令執行強制」という流れで手続きをおこないます。

以上が米国における「推薦・証言ガイドライン」の概要でした。日本でも話題に挙がってきているステルス・マーケティングですが、米国ではしっかりとした法規制がなされていることが確認できたと思います。

さて後編では、実際に米国で問題に上がった具体的な訴訟の事例をご紹介したいと思います。AmazonやYelpといった企業が話題に挙がってくるお話ですので、ぜひチェックしてくださいね。

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