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情報発信サイトから報道重視サイトに~NFL王者、ボルティモア・レイブンズのデジタル・メディア戦略~

公開日:2013年9月3日

2013年2月、米プロフットボールNFL(ナショナル・フットボール・リーグ)の王者を決めるスーパーボウルで12季ぶり2度目の優勝を果たしたボルティモア・レイブンズ。プレーオフ期間中に急増したチームのWebサイト(www.baltimoreravens.com)へのトラフィックは優勝決定とともにピークに達し、NFL32チーム中1位を記録した。

レイブンズは2006年、Webサイトを含むデジタル・メディア戦略の見直しに着手した。当時のWebサイトへのユニークビジター数は、最下位を争う31位。それがいまはコンスタントにトップ10に入る。集客を支えるのは、ファン参加型の娯楽要素と、第3者の視点でチームをカバーするジャーナリズムの両輪だ。

問題だらけのWebサイト

「知りたいことが見つからないし、内容に信頼性がない。ファンに対し、Webサイトに来てくれるなと言っているようなものでした。」

レイブンズのデジタル・メディア戦略を率いるデジタル・メディア担当バイス・プレジデント、ミシェル・アンドレス氏は、2006年当時のチームのWebサイトをこう振り返る。

ボルティモア・レイブンズのデジタル・メディア担当バイス・プレジデント、ミシェル・アンドレス氏

ボルティモア・レイブンズのデジタル・メディア担当バイス・プレジデント
ミシェル・アンドレス氏

レイブンズは、チケットが毎試合売り切れる人気チームだ。しかし、成長を続けるためには、既存ファンの維持と新規ファンの開拓、グッズ販売や広告などからの収益確保が欠かせない。そのための手段の一つとして着手したのがWebサイトの刷新だった。

記者を雇用して報道機関へと転身

NFLチームBaltimore RavensのWebサイト

NFLチームBaltimore RavensのWebサイト

チームのWebサイト刷新にあたり、アンドレス氏が最も重視したのがコンテンツの充実だ。そのために行った改革の一つが、プロの記者を雇用して、「報道機関のように」チームをカバーすることだった。現在はNFLチームの多くがこの手法を取り入れているが、当時はプロスポーツ全体でも新しい試みだったという。

「チームのWebサイト用に、いってみれば身内が取材して記事を書くわけです。それでも記事の内容は、嘘や偽り、誇張のない正確なものでなければいけません。チームやプレイヤーにとっては、読みたくない、厳しい内容の記事も、ときにはあるでしょう。」

記者とコーチの「合意書」作成

レイブンズのオーナーや経営陣トップ、広報責任者は、デジタル・メディア戦略の重要性に最初から理解を示し、アンドレス氏の取り組みに協力的だった。それでも「チームの情報を一方的に発信するWebサイト」から「報道重視Webサイト」への移行には、多大な痛みを伴ったという。

「ファンが繰り返し訪れてくれるようなWebサイトにするためには、何が必要か――これを常に自問していました。答えは、チームについて、タイムリーで面白いコンテンツを用意することです。そのために最も必要なのが “ニュース”ですが、最初はそれをなかなか理解してもらえず、特にチームのヘッドコーチの反発は強く、記者による取材がままならないこともありました。」

この問題を解決するために、チームのWebサイトの記者向けにガイドラインを作成した。このガイドラインは、ヘッドコーチと記者との合意書のようなもの。例えば、「ライバルチームに有利になるようなことは記事にしない」「他の報道機関がカバーしたニュースは、チームとして(その内容を)認める、認めていないにかかわらず、チームのWebサイトでもカバーする」といった約束事をまとめたものだ。実際に記者が取材現場で直面した課題や経験を基に作ったもので、今のところ非常に有効という。

現在は、チームをカバーする「番記者」2名、コラムニスト1名、そしてデイリーコラム「レイト・フォー・ワーク(Late for Work)」を執筆するサイト編集者の4名が記事を書いている。

不祥事報道も逆手に

プレイヤーの不祥事など、チームによって好ましくないニュースも積極的にカバーする。

「悪いニュースを避けていては、ファンから叱られるし、(報道機関としての)信用をなくしてしまいます。不祥事について、自分の考えを聞いてもらいたい、あるいはチームやプレイヤーに怒りをぶつけたいというファンもいるでしょう。チームのWebサイトは、ファンとチームが信頼関係を構築する場です。我々にとっては、ファンの声を聞き、ファンに会話に参加してもらう場でもあるのです。」

娯楽要素で年間を通じて集客

一方で、報道機関的役割を果たしているとはいえ、チームのWebサイトはファンに娯楽を提供する場でもある。従来の報道機関ではカバーできない、チームのWebサイトならではのコンテンツの充実にも力を入れている。例えば、プレイヤーの日常や意外な一面をとらえたビデオは、特に人気があるという。

オフシーズン中も含め、年間を通じてWebサイトやソーシャル・メディアにトラフィックを集め、チームとファンの間で会話を継続することも大切だ。そのための手段の一つとして力を入れるのが「レイブンズレップ(RavensReps)」というファン大使プログラム。チームのWebサイトから申し込んで大使になり、レイブンズのコンテンツを自分のソーシャル・ネットワークでシェアすると、その都度ポイントがもらえる仕組み。ポイントをためると、選手のサイン入りTシャツやドラフト会議後の記者会見に参加できるといった特典に応募できる。

このプログラムは年間を通じて人気が高く、2013年8月中旬時点で約17,000人がレイブンズレップになっている。

レイブンズのソーシャルメディア別フォロワー数

  • Twitter: 357,812フォロワー
  • Facebook: 1,512,105 Like
  • Instagram: 203,387フォロワー
  • Pinterest: 6,045フォロワー
    (2013年9月1日時点)

「ファンの声を聞き、どんなコンテンツの人気が高いかといったことに常に注意しています。新しいことにチャレンジする気持ちも忘れずにいたいですね。」


寄稿者紹介

鶏内 智子(かいち ともこ)
フリーランスライター。ニューヨークを拠点に、ハイテク、メディア、ヘルスケア業界を中心に取材と記事執筆活動を行う。

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