広報入門
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NHKと日経の報道がめざすこれからの方向
NHKと日本経済新聞(以下、日経)といえば、日本を代表する2つの巨大メディアである。6月から7月にかけて、日本PR協会のセミナーでだが、この2つのメディアを代表する人物の講演を聞いた。NHKは報道局の経済部長、日経は編集局の産業部長である。いずれも経済や企業の動向を報道する部門の責任者であり、2つの巨大メディアがめざす方向を垣間見た思いにとらわれた。特に、印象に残ったポイントをご紹介したい。
スクープを求めて日々闘うNHK経済部
NHK経済部は、金融、電機・情報、流通等をはじめとする業界から経産省や他の官公庁もカバーし、日本の経済にかかわるニュースを取材し報道するのが使命である。
最近は経済報道の分野で、(1) 消費者に近い情報の発信、(2) 経済番組や企業報道の拡充、(3)スクープ(特ダネ)の追求、を重点的な方針としているという。(1)と(2)の方針を具現化するため、NHK総合テレビで毎週土曜日午前の時間枠に「Vision e」という新しい番組を設けたとのことだ。経済や技術をわかりやすく紹介することを主眼としているようで、大学の教授をキャスターに採用し、コメンテーターにも多彩な人物を迎えるなど革新的な取り組みであることが強調されていた。
"公共放送"ともいわれていたNHKである。視聴者の中心的な対象は、当然、家庭のお茶の間なのだろう。そして今やお茶の間でも経済や企業、社会に関する情報のニーズは高まっているのだが、ただ堅苦しいニュースだけではそこに入りこめない。お茶の間に違和感なく入り込み、これらの情報を抵抗なく届けることがこの番組の意図と思える。
面白いなと思ったのは、(3)のスクープを意識的に追求していくという報道姿勢だ。
報道機関であれば当然のことだろうが、報道部ではスクープを求めて日々、果敢に闘っているとのことである。少し前に話題となったのだが、あおぞら銀行と新生銀行の合併についても、NHKが他社に先駆けて最初に朝のニュースで報道した特ダネということだ。
テレビの特色は、迅速な報道が行えることである。最近のニュース報道においては、日本経済新聞社に対して7対3で勝っていると話されていた。
そして経済部長が強調したのは、"NHKは大きく変わった"ということ。(1)から(3)は、まさにNHKが大きく変わったことを示す経済部としての具体策なのだろう。
昨年以前におけるNHKをめぐる一連の不祥事・・。イメージの回復には、"変わった"ということを印象付けることが重要なのだ。一連の問題が、NHKの方向に大きな影響を与えるきっかけとなったのは確かなようだ。
電子新聞への取組みを積極的に進める日経
日経の産業部長氏は40代半ばだろうか。日経の要職者としては若手のようだ。食品、化学、商社等の国内業界を担当し、中国の北京、上海支局勤務を経験した国際派でもある。話は、新聞業界の現況から始まり、日経の媒体、新聞編集の流れや毎日のスケジュール、産業部の取材体制、企業の広報担当への要望など、整理された内容で講演が進んだ。 業界や企業の動向、企業の業績、国際化、そして最近では環境対応が産業部が追う話題のポイントとのことだ。
日経といえば、産業や企業のスクープ報道には定評がある。私には、発表会やニュースリリースを通じて得られる他紙と横並びの情報については、日経の記者はあまり興味を示さないという印象が強い。夜討ち朝駆けによるコメント取りや単独取材を通じて他紙に先駆けた報道を最重視しているかのように思える。
話を聴きながら気付いたのは、最近はNHKの経済報道をかなり意識していること。特に、NHKの午後2時のニュースには注意しているという。この時刻は朝刊と夕刊のはざまにあるため、午前中の重大ニュースの報道についてはテレビに対して遅れをとらざるをえない。前述したとおりNHKはスクープを重視しているというから、この時間帯を活用することにより、日経へ対抗しようとしているのかもしれない。
もう一つ、興味深いと思ったのは、日経のインターネット対応だ。メディア各社はネット対応を進めてはいるが、利益のあがるビジネスの実現に向けては、いずれも模索を続けている状態といえる。
日経は、電子化については従来より積極的に進めており、各種のデータベースサービスもすでにネットを通じて提供してきたという実績がある。そして、この秋には日経新聞のすべての記事をネットに載せ読めるようにするという。紙に印刷する新聞の発行をやめることはないのだろうが、ネットへの対応は時代の流れであろう。提供価格等の詳細についてはまだ公表されていないが、電子新聞ビジネスを本格的に開始し業界のリードに意欲を燃やしているようだ。 ただ、きちんと利益のあがるビジネスモデルが確立できるのか、課題は大きいようにも思えてしまう。
不変な信頼関係の重要性
2つの講演では、いずれにおいても広報担当者への期待が述べられた。2人の部長氏が共通して重要と述べていたのは、記者と広報担当者の間における信頼関係の確立。言えないことはあっても、ウソは言わないこと、連絡をきちんととれること等々、具体的な要望が語られていた。いずれも、広報の立場では、基本的なことばかりである。
時代は大きく変わり、情報を載せる媒体が紙からネットに拡大したとしても、メディア(記者)と企業(広報)の間における信頼関係の重要性は変わらないのだろう。広報の原則をあらためて確認できた2つの講演でもあった。
神谷町の広報マン 愛称:マーベリック
外資系IT企業で広報マン17年、PR系企業におけるコンサルタント生活3年を経て、現在は神谷町にある金融会社にて広報を担当。広報マンとして20年余を過ごす。広報の仕事と、赤ワイン、クルマ、そして年に数回に過ごす軽井沢での静かな生活をこよなく愛する。独自の視点から広報を語り、広報の仕事に携わる後進の成長に貢献したいと考えている。
マーベリック氏のコラムは、今回で一旦休刊となります。ご愛読いただいた皆さま、ありがとうございました。 過去24回のバックナンバーは以下をご覧ください。
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