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市民ジャーナリズムとPR業界

公開日:2007年1月11日

事件や事故現場を撮影し、ブログやユーチューブ(YouTube)、マイスペース(MySpace)といった人気サイトに発表する、いわゆる市民ジャーナリストの活動の場が増えている。従来のメディアではカバーしきれないニュースを収集し、スクープが生まれることも少なくない。市民ジャーナリスト現象が PR業界に与える影響は甚大だ。

大手メディアが普及に一役

 大手メディアでは、コンテンツ調達手段のひとつとして市民ジャーナリストを活用する動きが広がっている。ヤフーは昨年暮れ、大手通信社のロイターと提携し、一般市民から写真と映像を募集し公開する新サービス「ユー・ウィットネス・ニュース(You Witness News)」(ベータ版)を開始した。話題性のある優れた投稿には謝礼を払い、ロイターの提携先報道機関に配信することも検討する。8月にはCNNが同様のサービス「CNNエクスチェンジ(CNN Exchange)」を導入。一般から提供されたコンテンツを、CNNの審査を経て公開する。他に英国BBCも同様のサイトを立ち上げた。大手メディアによるコンテンツ公開と報奨の仕組みが整えば、市民ジャーナリズムの勢いはますます加速する可能性がある。

 そこで注目されるのがPR業界の対応だ。PR業界はこれまで、組織の情報のコントロールに多大な役割を果たしてきた。市民ジャーナリスト現象は業界にとってプラスかマイナスか、また業界が抱える課題は何かなどについて、大手PR会社エデルマン(Edelman)のメディア部門、ミー2レボリューション(me2revolution)の上席副社長、マイケル・ワイリー氏に聞いた。

マイケル・ワイリー氏
ゼネラルモーターズの元グローバル・コミュニケーションズ・テクノロジー/ニューメディア担当ディレクター。昨年8月より現職。

―市民ジャーナリストの活動の場が増えています。


マイケル・ワイリー氏
マイケル・ワイリー氏

ワイリー氏
 市民ジャーナリストは、何らかの目的を持って独自の調査報道に取り組む、いわゆる目的を持った市民ジャーナリスト(purposeful citizen journalist)と、たまたま大きな事件や事故に出くわした、偶然の市民ジャーナリスト(accidental citizen journalist)の2つに大別されます。前者の社会や関係者に与える影響が大きいのはもちろんですが、後者の力も同じくらい大きいのではないかと思います。これらの人たちは、従来のメディアがカバーしない、隙間を埋める役割を果たしています。特に企業は、社内にいる市民ジャーナリストに常に監視されているようなものです。企業の無責任な行動や過ちは、ブログなどを通じてすぐに発覚します。その意味で、市民ジャーナリストは企業の体質改善に貢献していると言えます。

―企業から外部に発信されるメッセージは従来、PR専門家がコントロールしてきました。市民ジャーナリズムの台頭は、コントロールを奪うことになりませんか。

ワイリー氏
 それは確かです。特に過去数十年間、PRに対する考え方や方法を変えてこなかった企業にとって、市民ジャーナリズムへの対処は難題です。企業はこれまで、プレスリリースを作成し、PR担当者が一枚岩となってメディアに対応することでメッセージをコントロールしてきました。しかし、今日では関係者とのカンバセーション(会話)に参加しない限り、企業がメッセージをコントロールするということは、ほとんどありえません。実際、今日ではメッセージそのものが様々な関係者と共同で作成されています。

―この現象は、PR業界にとって何を意味しますか。

ワイリー氏
 個人的には、PR業界の成長の可能性は、途方もなく大きいと思います。しかし、成長のためには、時代に即した新しいスキルを身につける必要があります。従来のイベント企画、危機管理、プレスリリースの作成と配信、広報などのスキルに加え、企業のレピュテーション(評価)を主導する、あるいは顧客関与型の活動に参加するためのスキルが必要です。PRの対象は、従来の主流メディアから、一般消費者作成メディア(CGM)の提供者、つまり、はるかに幅広い人々に広がりました。CGMの成長により、PR担当者の役割はさらに大きくなります。

 過去18ヶ月の間に、ほとんどのPR専門家は周辺環境の変化と、それに伴い自らも変化する必要性を感じたことでしょう。しかし、個人的見解ですが、PR専門家のなかでもコーポレート・コミュニケーションの担当者は、時勢に取り残されているようです。必要なスキルの取得や、メディア環境の変化に即した考え方への適応が遅れています。

―最大の課題は。

ワイリー氏
 コントロールの喪失、未知の環境への対峙、会話への参加など、新たな環境に立ち向かう際に生じる恐怖心を克服することです。プレスリリーと違い、ブログなどの会話には事前に法律専門家の目が行き届きません。ささいなことが法的問題に発展する危険もあるわけです。また、会話に参加すると、企業に対するマイナスの評価にも真摯に対応しなければなりません。マイナス評価や過ちを認めるのは、大切ですが容易ではありません。

―ミー2レボリューションの目的は何ですか。

ワイリー氏
 トレンドを調査し、顧客企業に重要な傾向を伝えることと、CGMへの対処についてエデルマン2500名のPR担当者を教育することです。PR業界を取り巻く環境は変化しています。これに対応できない企業は取り残されることになるでしょう。

関連URL:エデルマン(Edelman)
URL http://www.edelman.com/

関連URL:ユー・ウィットネス・ニュース(You Witness News)
URL http://news.yahoo.com/you-witness-news/

■ ライター : 大村智子(ニューヨーク在住)

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