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米企業で広がるコミュニケーション手法、コーチング

公開日:2005年12月1日

 ここ数年日本でも頻繁に耳にするようになった「コーチング(coaching)」。日産自動車再建を主導したカルロス・ゴーン社長兼会長兼最高経営責任者(CEO)が社員のモチベーション回復に取り入れたことでも注目された。概念は米国で15~20年前に生まれたが、ここにきて業績改善や問題解決に積極的に採用する企業が増えている。企業や個人顧客にコーチングを提供するストラテジック・ディレクションズ(Strategic Directions)のプリンシパル、キャサリン・エモンド氏とルイス・エモンド氏にコーチングとは何か、また注目される理由を聞いた。
―コーチングの定義を教えてください。
キャサリン・エモンド氏(以下、キャサリン氏) 簡単に言えば、質問形式によるコミュニケーションの実践を通じて、企業、職業人、あるいは個人のゴール実現を支援することです。企業クライアントには、企業として何を達成したいか、といったゴールの設定と実現をお手伝いします。大切なのは、コーチングではクライアントに「ゴールはXXであるべきだ」とか、実現のために「XXをするべきだ」といった指導やアドバイスは行なわないということです。多様な角度から質問を投げかけて、クライアントの自発的なゴール設定と、そのために必要な現状の問題発見と解決策の立案・実行を促します。

―トレーニング(訓練)やコンサルティングとの違いは何ですか。
ルイス・エドモンド氏(以下、ルイス氏) 大きな違いは、コンサルタントがクライアントの現状や要望を聞いた上で、クライアントに代わってゴールや行動計画を立案するのに対し、コーチングでは、それらのことを全てクライアントが行なうという点です。我々は、そのためのツールを提供するだけです。クライアント以外の組織や人が作成したゴールや計画は、とどのつまり作成者自身のものであり、クライアントのものではありません。このため、せっかく時間と労力を投資して作成した計画も、実施されずに忘れられてしまうといったが起り得ます。私やキャサリンが、米国政府、米国空軍、大手企業にコンサルタントとして関わった時も、こうした問題がありました。

―具体的に何をするのですか。
キャサリン氏 企業の場合、社員の離職率が高い、顧客満足度が低いなど、具体的な問題を持っていて、それらを解決するためにコーチングを取り入れる例が一般的です。最初にやるのは、企業のスキルや知識に応じたゴールの立案です。夢や目標を聞き、実現を妨げているものは何か、原因は何で、どうすれば解決できるか、などを質問して、クライアントの答えを導きます。ゴールが決まれば、具体的な行動計画を考えます。次に、関係者の考え方や態度を、決めたことは必ずやり遂げる、という自発的、かつ肯定的なものに変える手助けをします。優れたゴールを設定しても、考え方が否定的であれば結果は期待できないからです。

―ゴール設定にあたり大切なことは。
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ストラテジック・ディレクションズのキャサリン・エモンド氏(左)とルイス・エモンド氏。

キャサリン氏 SMARTなゴールを作ることです。具体的(Specific)、測定可能(Measurable)、達成可能(Attainable)、現実的(Realistically)に高いこと、そして具体的な達成期限(Target date)を決めることですね。ゴールはある程度現実的で実現可能でなければなりません。いったんゴールを決めたら定期的に進捗状況を確認し、必要に応じて軌道修正も行います。繰り返しになりますが、軌道修正を決めるのはクライアントです。我々はクライアントの意見、アイデアなどを聞き、質問を投げかけることによって、クライアントの意思決定を助けます。

ルイス氏 ゴール実現の障害になり得ることを予め洗い出し、バックアップ策を決めておくことも重要です。ゴール達成に盲目的に心を奪われていては、他の大切な問題を見落としたり、想定外の事態が発生した時に対処できなかったりします。何も起きないにこしたことはありませんが、いざという時の準備は必要です。
 障害を見つけるため多様な角度からクライアントに質問しますが、クライアントのビジネスに対する見方を広げ、理解を深めるという利点もあります。また、せっかくゴールを実現しても、関係者全員と共有しなければ成果をあげるのは困難です。幹部レベルで企業としてのゴールを立案したら、それに沿った形で各部署、担当、社員がそれぞれのレベルでゴールを設定する必要があります。

―難しい点は。
ルイス氏 特に企業トップに言えることですが、自社の問題を認め、外部に助けを求める必要があることを理解してもらうことです。また、トップが決めたゴールを組織内の細部に行き渡らせて、実現に向けたモチベーションを共有し、維持することですね。

―クライアントとは、どのくらいの頻度で会いますか。
キャサリン氏 一般的に1サイクルは1年です。最初の約3か月はクライアントを週2回訪問し、コーチングとは何か、具体的に何をするのか、などを話し合います。この訪問をセッションと呼びますが、各セッションの間に2時間ほどの作業を要する宿題をクライアントに与えます。テキストや関連書籍を読んでもらうことなどですね。だいたい10セッションを終えたあたりで、残りの9ヶ月は毎月2~8時間ほど会います。この間も電話では頻繁に連絡を取り合います。

 なぜ1年もかけるかというと、例えば4時間程度のミーティングでは、コーチングの意義は理解されても、「いいアイデア」だけで終わり、実施されることがないからです。また、時間をかけるのは、クライアントに考える機会を与える狙いもあります。物事に対する見方や考え方を変え、さらに実際の行動に反映させるには時間がかかります。

―米国におけるコーチングの現状は。
ルイス氏 個人を対象にしたコーチングは従来も盛んですが、ここ数年はビジネス分野への展開が進んでいます。また、現在は誰でもコーチを名乗れるため、複数の業界組織がライセンス制度の導入に向けて準備をしているところです。いつまでも成長を続けたい、と願うのは人情です。コーチングを取り入れる企業は今後も増えるでしょう。 コーチングには個人や企業対象、企業でもトップ・中間管理職など役職レベルに応じたツールや手法があります。最近は児童を対象にしたものも提供されています。

関連URL:
ストラテジック・ディレクションズ(Strategic Directions)
http://www.strategicdirectionsllc.com

リソース・アソシエイツ(Resource Associates)
(コーチング会社大手。独自ツール・手法を開発し他社に提供。ストラテジックも同社ツールを利用している)
http://www.resourceassociatescorp.com

■ ライター : 大村智子(ニューヨーク在住)

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