広報・マーケティング担当者のための
ネット上の情報発信・情報流通を支援するネットPR.JP

米国企業のCSR-社会的貢献と事業機会の追及-

公開日:2005年3月3日

 「企業の社会的責任(CSR)」という概念がひんぱんに議論されるようになってきた。
 企業による相次ぐ不祥事や、財政難を背景とした連邦政府による社会福祉投資の削減などを背景に、企業は法令を遵守することはもちろん、社会の一員として積極的に社会に参加し、その責任を果たすことが求められている。CSRという言葉が使われ始める以前から、企業は様々な慈善事業への参加や、公共性の高い政策への支援などを通じて社会に携わってきた。
 だが、最近はCSR活動による事業活動への影響に関する研究が進められ、さらにCSRの充実度が企業評価に直結するようになったこともあり、CSR活動を事業機会拡大の一部ととらえ、グローバルな視点から戦略的に取り組む企業が増えている。
―事業活動に直結した活動を強化
 企業のCSR活動は、地元の図書館や美術館建築などへの資金援助、教育機関や非営利団体(NPO)への余剰パソコンや自社製品の寄贈、リサイクル活動の実施、従業員によるボランティア活動支援といった地元密着型のものから、途上国の飢餓救済、疾病の治療薬開発、地球温暖化対策研究への資金提供といったものまで多岐にわたる。ゼネラル・エレクトリック(GE)、ヒューレット・パッカード(HP)、IBMなどの米国でも優良企業として評価の高い企業は、広範な社会貢献活動に早くから組織的に取り組んでいることで知られる。

 社会貢献活動、またはCSR活動を行う目的は「倫理的責任の遂行」と「事業利益の追求」の2つに大別されるが、最近の傾向として、事業活動により肯定的で直接的な影響をもたらす分野への取り組みに、投資が集中して行われている。

 技術系企業では、自社の製品を教育機関や研究施設へ寄贈することで企業イメージを高めることはもちろん、それらを付加サービスや製品の販売機会拡大の足掛かりとしている。製品の潜在的ユーザを開発段階から参加させ、市場を創造するといった積極的な取り組みも見られる。たとえば、IBMは高齢者や障害者の生活改善や社会進出を支援する目的で開発中の音声認識技術を障害者団体などに無料で提供し、ユーザからのインプットを製品開発に生かすと同時に、需要開拓を図っている。

 経営コンサルティング会社のアーサー・D・リトルは、社会貢献活動の実施によって企業に好影響をもたらすと期待される分野として、以下を挙げている。

 レピュテイション・マネジメント(企業イメージの向上)
 リスク・プロファイルとリスク管理の徹底
 優秀な人材の雇用と維持、従業員の倫理観向上
 IR(インベスター・リレーションズ)と資金アクセス向上
 (事業活動における)創造性と革新の促進
 市場競争力の向上
 業務効率の向上
 企業活動の持続

 こうした好影響は、いずれも事業機会の拡大や収益向上に貢献すると考えられている。

―顧客ニーズの把握に貢献
 企業の社会貢献活動に関する専門誌、ビジネス・エシックス・マガジンは、毎年、最優秀企業市民100リストを発表している。公開企業650社を対象に、株主、地元社会、社会的少数派(マイノリティ)、女性、従業員、米国外ステークホルダー、顧客、の合計7ステークホルダーごとに企業の活動を評価しランク付けしたもので、5回目となる2004年度調査では、米国最大のローン提供会社で金融サービス業のファニーメイ(Fannie Mae)がトップで、これにプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)とインテルが続いた。

 ファニーメイは、融資を受けることが難しいマイノリティによる住宅購入支援を目的に、2003年に160万人を対象に合計2400億ドル強の資金を提供したことが評価された。一方のP&Gは、ベトナムやインドの恵まれない青少年や子供を対象とした支援活動や、途上国の飲料水を廉価で消毒する技術を開発したことなどが高い評価につながった。いずれも本来の事業に直結した活動を実施しており、特に世界80カ国で事業を展開するP&Gは、こうした活動を通じ、世界に分散する潜在顧客の多様性やニーズの把握に役立てている。

―期待感の一人歩きに懸念も
 エコノミスト・インテリジェンス・ユニットとオラクルが昨年10月に企業幹部と機関投資家を対象に実施した調査では、回答者の84%がCSR活動は企業のブランド力や従業員のモラル向上などに寄与し、最終的に企業の収益性向上に貢献すると答えた。だが、こうした期待とは裏腹に、CSRによってもたらされた事業面の利益や活動実施コストを、測定、評価する方法は確立されておらず、期待感ばかりが一人歩きすることに対する警戒感も高まっている。

 シンクタンクのサステイン・アビリティ、国連環境計画、スタンダード・アンド・プアーズが昨年11月に発表した国際的企業の環境と持続性に関する調査では、コーポレート・ガバナンスや社会的・環境的問題への取り組み内容など、企業による非財務的業績に関する情報公開に目覚しい改善が見られた。こうした企業による包括的な情報開示トレンドは、CRS活動を企業の業績を左右する重大な要素と捉え、客観的な評価に対する必要性が高まってきたことの現れといえる。次回では企業の具体的なCSR活動を紹介する。

■ ライター : 大村智子(ニューヨーク在住)

Follow us!

ネットPR.JP 記事カテゴリー

ネットPR.JP 記事年別アーカイブ

ネットPR.JP 最新記事

ネットPR.JP 記事カテゴリー

ネットPR.JP 記事年別アーカイブ