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広告のターゲット配信とプライバシー問題

公開日:2004年5月6日

 インターネットが企業と潜在顧客を結ぶ新たなチャンネルに台頭して久しい。送り手が一方的に情報を配信するテレビや雑誌広告、ダイレクトメールなどの従来のチャンネルとちがい、受け手の嗜好、趣味、性別といった情報を収集し、カスタム化した内容の広告を効率的に配信できるのが特長だ。
しかし、最近では技術の進歩とともに情報収集の方法が多様化し、本人の知らないうちに極めて個人的な情報が持ち出され、頼んでもいない情報が広告やメールの形式でひっきりなしに送られて来るといった問題が急速に表面化している。政府が対策に腰を上げ始め、言論の自由の保障を盾に広告関連業界が立ち向かう構図が鮮明になってきた。

―スパイウェアの氾濫
 スパイウェアは、急速に勢力を拡大してきた情報収集プログラムの一つだ。ユーザーが気付かないうちにパソコンにインストールされ、いつ、どのウェブサイトを閲覧したかといったユーザーのオンライン上の行動を監視、記録し、予め指定された第3者に送信する。その後、旅行代理店サイトを頻繁に訪れているユーザーには旅行パッケージのポップアップ広告を配信するなどし、情報はマーケティング活動の効率化に利用される。

大手インターネット接続事業者のアースリンクが今年1月から3月末にかけてパソコン100万台を対象に実施した調査によると、パソコン一台あたり平均27.8個のスパイウェアが発見された。連邦取引委員会(FTC)もスパイウェアはパソコンの9割強に何らかの形で潜伏しているとして、その蔓延ぶりに警鐘を発している。

スパイウェアのやっかいなのは、ゲームや壁紙など無償ソフトへのバンドル、電子メール、ウェブサイト経由でパソコンにインストールされるため、ほとんどのユーザーがその存在に気付かず、削除などの対策が遅れてしまう点だ。また、スパイウェアには「アドウェア」や「アドウェア・クッキーズ」のようにマーケティング目的でユーザー情報を収集し、ポップアップ広告を表示する比較的無害なものもあれば、キー入力を監視してユーザーの行動を広範囲に把握し、データ盗難、システム破壊などの悪意を持った攻撃を仕掛けるための「トロイの木馬」といった悪質なものまで多くの種類がある。先のアースリンクの調査では、こうした悪質なプログラムも30万個見つかった。

ユーザーの被害も、「ポップアップ広告が煩わしい」、「パソコンの処理速度が落ちた」といった比較的軽いものから、社会問題化したアイデンティティ・セフトまで幅広い。企業がスパイウェアによる業務の生産性低下に悲鳴を挙げている、との報告もある。

―動き始めた政府機関
 スパイウェアによる被害に、いち早く対応したのはユタ州だった。全米初となるスパイウェア取り締まり法「スパイウェア・コントロール法(Spyware Control Act)」を3月に可決、成立させた。同法ではスパイウェアのインストールと、ユーザーのウェブサイト閲覧行為を阻害するようなポップアップ広告の表示を禁止し、違反行為には最大1万ドルの罰金を課した。

連邦政府レベルではFTCが先ごろ公聴会を開催し、セキュリティリスクに関する意見を募った。連邦政府は従来、技術革新優先の立場から規制には消極的で、業界努力による解決を求めてきた。しかし、今後は公聴会開催をきっかけに連邦レベルの規制策定の動きが加速するのは確実で、すでに上院議員が法案を提出している。

―規制反対の産業界
 産業界は概ね政府による規制に反発している。オンライン広告会社ホエンUは、ユタ州の新法は言論の自由を侵害し、また事業を不当に妨害するとして、同法の施行差し止めを求めてユタ州を訴えた。ホエンUは無償ソフトにバンドルして配布したスパイウェアを使ってユーザー情報を収集し、内容に応じてクライアント企業の広告をユーザーのパソコン画面に配信する。同社はユーザーの了承を得て情報を収集しており、収集方法と利用方法ともに違法性はない、と主張している。その根拠は同社が作成し、ユーザーが合意したソフト使用許諾書で、これにはスパイウェアについても記載されているからだ。
しかし、許諾書の内容を熟読した上で合意するユーザーは限定的と考えるのが現実的で、ユーザーの合意を得たとするホエンUの主張には弱みがある。一方、同社の行為を違法と判断するだけの明確な規準も現時点では存在しない。業界誌によると、アメリカ・オンライン、マイクロソフト、ヤフーなども新法に反対しているという。
―グーグルの試み
 検索エンジン大手グーグルは、このほど試験運用を開始した無料インターネット・メール・サービス「Gメール」のユーザーのプライバシー扱いをめぐり、消費者擁護団体などから激しい批判を受けている。問題になっているのは、メール本文からキーワードを拾い上げ、関連する内容のテキスト広告をメール表示画面にいっしょに掲載するという機能。たとえばコンサートに関するメールでは、チケット購入サイトへのリンクを表示する。グーグルでは、作業は全て自動化され人の手を介さないこと、メール本文やユーザー情報は広告主など外部には漏らさないことなどを説明し、実用化に理解を求めている。

米国では今年1月に迷惑メール(スパムメール)禁止法(通称CAN-SPAM法)が施行され、アメリカ・オンライン、マイクロソフトなどが同法を根拠にスパマーの大量告訴に踏み切った。しかし、スパムメール抑止効果は実感できず、電子メール・ソリューション提供のポスティニ(Postini)によると、企業顧客2万700社が3月に受信したメールのうち77%はスパムメールで、2月の76%から増加したという。

オンライン広告、マーケティングをめぐっては商標権、著作権の扱いといった問題も浮上しており、今後の法整備が急がれる。

■ ライター : 大村智子(ニューヨーク在住)

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