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米大統領選挙とインターネット

公開日:2004年4月1日

 米大統領選は、11月の本選を前に民主・共和両陣営による選挙運動がいよいよ本格化してきた。各地で開催される討論会や支持団体によるテレビ広告を使った馴染みの舌戦と違い、今回の選挙で目を引くのはインターネットを使ったPR活動の広がりだ。

―ディーン前候補の挑戦
 調査会社ピュー・インターネット・アンド・アメリカン・ライフ・プロジェクトによると、2000年の大統領選時と比較して、今年の選挙ではインターネットを利用して定期的に選挙関連情報を収集するアメリカ人の数は44%増加した。利用人口の拡大とともに、世論形成の場の一つとしてのインターネットの役割がクローズアップされている。

選挙戦におけるインターネットの役割に脚光を当てる、きっかけの一つをつくったのは、民主党候補指名争いに立候補し、一時は最有力候補と目されたディーン前バーモント州知事の選挙運動だ。すでに多くのメディアで報道されていることであるが、ディーン前候補はインターネットを有効利用して支持層を広げ、党史上最高といわれる選挙資金集めに成功した。

ディーン陣営はインターネットの有力コミュニティー形成ツールを利用し、コミュニティ参加メンバーが新メンバーを勧誘する形で次々と支持者を増やして行った。支持者獲得には従来、ボランティアがダイレクトメール発送や街頭アンケート、電話勧誘などを実施するのが一般的だが、コミュニティ利用によって経費の削減が期待できる。しかし最大の利点は、予めある程度共通の興味を持った人物を対象に、草の根的に幅広く支持獲得のアプローチを掛けることが出来る点だろう。また、候補者からの一方的なメッセージ配信に陥りがちな従来の選挙運動と比較して、有権者が自分の意見を自由にフィードバックできるという、インターネットならではの民主主義的要素が浮動票層や若者に新鮮に映ったことも事実だろう。

ディーン陣営にとっても、コミュニティ利用の効果は当初の期待以上だったようだ。さらに嬉しい誤算は、ディーン陣営のインターネット戦略をメディアが報道し、結果的にディーン氏の知名度向上に寄与したことだろう。

―増えるウェブログ利用
 ディーン氏の成功にならい、他の候補もこぞってインターネットを使った活動に力を入れ始めた。なかでも今回の選挙で特徴的なのは、ウェブログの利用だろう。ブッシュ大統領をはじめ、民主党指名候補の全陣営がウェブログを運営し、選挙戦の争点に関する候補者の見解、議論、批判広告への反論などを掲載している。

大統領選挙を機に、候補者陣営以外でも、政治をテーマにしたウェブログが数多く登場した。このうちの一つ、「ウォッチ・ブログ(WatchBlog)」では、「民主党員」「共和党員」「第3パーティー」の3つのテーマを設け、複数のエディターがニュース、コメントなどを掲載している。同サイトの呼び声は、簡単にまとめると「政治は分かり難い。誰を信じ、誰の話を聞き、誰を支持すべきかの判断は時に困難である。そんな時こそ、このサイトを利用して下さい」だ。

―市民団体のサイト
 民主党系の市民団体「ムーブオン(MoveOn)」では、170万人の会員が選挙資金を拠出し、ブッシュ大統領の批判広告を制作した。同団体では会員がオンラインでそれぞれ政策課題や戦略の優先度を投票、議論する場を設け、選ばれた最優先課題を選挙活動の指針としている。同団体を設立したのは、政治とは全く関係のないシリコンバレーの起業家2人だった。1998年、当時のワシントンの政治を非難する意見書をオンライン上に発表したところ、数日間で数十万人の賛同を得た。これが同団体設立のはじまりだ。
―注目されるウェブログ広告
 従来、ウェブログでは広告は入らないのが一般的だ。特定のテーマについて個人が考えを述べるというウェブログの性格上、内容が反社会的になったり、広告主の意見と相反する危険がつきまとうためだ。また、サイト運営側にとっては、広告を掲載することでウェブログの独立性が損なわれるとの危惧がある。このため、ウェブログは運営者の個人資金や参加者の寄付金によって運営されることが多い。

しかし、特定のテーマに関心を持った人が集まるウェブログは、広告のターゲット配信に最適であることも事実。ウェブログ広告に特化した広告代理店も登場している。ニッチ市場を対象とした機器メーカーなどはマニアが集まるウェブログに優先的に新製品情報を配信したり、ユーザーの動向調査を行ったりと、PR媒体の一つとしてウェブログを積極的に活用している。PRまたは広告媒体としてのウェブログの将来を考察する上で、大統領選でのウェブログ活用の様子は何らかのヒントになるかもしれない。

■ ライター : 大村智子(ニューヨーク在住)

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