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クライシス・モードから始まる危機管理

公開日:2004年2月5日

 インターネットの進化と普及によって情報伝達のスピードは格段に早くなり、企業の危機管理対策も、時代に即した迅速な対応が求められるようになった。「問題を抱えた企業の将来は、問題そのものでなく、問題にいかに対処したかによって決まる」と話す危機管理コンサルティング会社、ロビン・コーン・アンド・カンパニー(Robin Cohn and Company)のロビン・コーン社長に、危機管理対策とネットを使った情報提供窓口「クライシス・ページ」について聞いた。
―クライシス・ページとは、何ですか
コーン氏 何か問題が発生した際に、何が、なぜ起こったのかなど、問題に関する企業の見解を掲載し、関係者への速やかな情報提供の窓口となるウェブサイトです。状況にもよりますが、問題を起こした企業のトップは、何よりも先に関係者に対して問題発生を陳謝しなくてはなりません。陳謝も、このページに掲載します。
このため、クライシス・ページは出来るだけ早く公開されることが重要です。問題発生直後は状況把握が困難で、情報提供は難しいと考える企業があるかも知れません。その場合は、把握できた情報から随時提供して行く旨を伝えればいいのです。

―情報提供の対象と目的は


 ロビン・コーン氏

コーン氏 一般の人々、株主、ジャーナリストなど、企業に関心のある全ての人々が対象です。締め切り前のプレッシャーでイライラを募らせたレポーターは、必要な情報を十分に得られない企業について「問題の状況把握が出来ていない」、「問題解決に協力的でない」、「被害者に関心がない」、などのマイナスの印象を抱くかもしれません。記事のトーンは必然的に否定的になります。逆に、レポーターが良い印象を持つと、記事のトーンも肯定的になる。これは、一般の人々にも当てはまります。
危機に直面した企業の将来は、人々の企業に対する認識やイメージで決まります。事実関係ではありません。そして、その認識やイメージの大部分は、情報公開のタイミングや情報の中身、陳謝の有無などによって決まるのです。

 当然ですが、従業員にも同じ情報を提供しなくてはなりません。従業員と経営陣が問題を共有できれば、従業員のモラルは高まり、企業に対する肯定的なイメージも維持されます。
近年、日本でも従業員によるマスコミや政府当局への内部告発が増えているようですが、従業員との情報共有の欠如が一因です。

―クライシス・ページ運営で重要なことは
コーン氏 クライシス・ページは、問題発生時に速やかに公開することが必須です。そのために、事前の準備が大切であることは言うまでもありません。例えば、誰が、何に対して責任を持つかについて、経営陣の間で役割を決めておくことです。また、深刻度の高い問題の発生に備え、クライシス・センターの準備もしておくといいでしょう。クライシス・センターとは、いざという時に危機管理の責任者が結集する、電話やコンピュータなどが完備された危機管理対策本部です。センター内にプレスルームを設置して、マスコミへの情報提供や質問に直接応じる場を設ける賢明な企業もあります。

 また、全ての企業にとって非常に大切なことの一つは、外部への情報提供者、つまりスポークス・パーソンを決めておくことです。スポークス・パーソンは企業の代表として、企業のイメージに重大な影響を与えます。メディア・トレーニングを受けて、マスコミとの応答やテレビでのコメントの方法などを日頃から学んで身に付けておくことが必須です。

―米国では、クライシス・ページの利用は一般的ですか
コーン氏 残念ながら、まだ新コンセプトという段階です。企業の多くは、いまだに「自分たちには問題は起こらない」と信じ込んでいます。だから、形だけ危機管理計画を策定して、定期的な見直しをしない。危機管理意識の低さが顕著に現れた例の一つが、数年前に旅客機事故を起こした米航空会社の対応です。この会社は事故発生から間もなくウェブサイトに事故に関する情報を公開し、ホームページの一面にリンクを貼りました。ところが、ホームページの一面には、旅行キャンペーンの広告を大きく掲載したままでした。これを見た人々が、同社の誠実さに疑問を持ったとしても不思議ではないでしょう。
―危機管理対策の遅れは、どこに原因があると
コーン氏 一つには、経営陣の意識の低さです。日々の業務に追われ、危機管理まで考える余裕が無い、自分たちは危機とは無縁、などと考えている。特効薬はありませんが、PR担当者が経営陣に危機管理の重要性や方法を上手く説き、トップの時間を数時間でも危機管理検討に向けさせることです。危機に対する無防備さを知らしめることがスタートです。先に事前準備の例を簡単に紹介しましたが、これらはほんの一部に過ぎません。準備には細かなパズルを組み合わせるような作業が必要で、一昼夜で出来るようなものではありません。
―危機管理に優れた企業とは
コーン氏 私は書籍「PRクライシス・バイブル(The PR Crisis Bible)」を執筆した際に、優れた事例を見つけるのに苦労しました。というのも、企業が上手く対処した危機は、ニュースにはならないからです。例えば、これは私の友人に起こったため偶然に知り得たことですが、ある日友人に、コーヒーポットの製造会社から製品リコールを知らせる陳謝の手紙と、製品返送用の箱、代替用の製品が届きました。問題発生時に企業が取り得る最悪の対応は関係者を怒らせることですが、この事件では企業が素早く陳謝し、顧客の便宜を優先した対応を取ったことから、顧客は誰一人苦情申し立てをしなかったそうです。ですから、ニュースにもなりませんでした。この話を友人から聞いた私は、すぐにこの企業のファンになりました。つまり、この企業はリコール問題を通じて、既存顧客のロイヤルティ向上を実現したばかりか、新規顧客まで獲得したわけです。

 従業員が少ない小さな会社ほど、危機発生時の個々の役割を決めておくことが大切です。この事例は、オープンで誠実な態度で臨めばマイナスもプラスに変えることができるという、典型的な例です。問題は、何事も小さなうちに見つけて解決するという心構えが必要です。このためには、日頃から「もし~だったらどうなるか」「何が起こり得るか」という視点、つまり「クライシス・モード」で物事を捉え、素早く動ける体制を整えておくことです。

■ ライター : 大村智子(ニューヨーク在住)

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