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ナンセンス不要のインベスター・リレーションズ

公開日:2003年8月7日

 四半期決算で売上高、純利益ともに前年同期比増を達成した企業の株価が、決算発表の翌日に大暴落――。株式市場から歓迎されるべき好決算の無惨な結末は、純利益がウォールストリートの予想を僅かに下回り、消極的な来期見通しを示したことが原因だ。そうかと思えば、赤字を計上し、大掛かりなリストラ策を発表した企業の株価が反発する。少し乱暴かもしれないが、いずれも投資家の視点が企業の短期的な業績に集中し、本質的なパフォーマンスや長期的な成長性に対する評価が、おざなりにされて来た結果といっていい。一方、会計不祥事の後始末として新規制が成立し、企業情報の開示が厳格化された。これらを背景に、株主や投資家の信頼を回復、改善し、企業価値を高める必要性から、企業に投資家向け広報「インベスター・リレーションズ(IR)」の方向性や重要性を見直し、強化する気運が高まりつつある。

キーワードは双方向性
 ウェブサイトは、企業がIR活動の効率化と強化を目指して力を入れる投資分野の一つである。最近は単なる情報掲載に留まらず、投資家のニーズに応じて開示方法を多様化し、フィードバックを回収するなど、投資家との双方向型通信機能の導入が注目されている。

 エニュメレイト(enumerate)は、IR関連データをチャートや表で掲載し、投資家にカスタム化させるソフトウェア・プラットフォームを開発した。企業は素材となるデータを指定するだけでよい。あとは、エニュメレイトのソフトが自動的に作業をしてくれる。サイトの訪問者は、必要に応じてチャートや表にマウス操作で簡単にデータや計算式を追加、削除でき、作成したチャートなどは、他のプレゼンテーション資料へ挿入することも出来る。情報を視覚的に提供することでより実践的な価値を持たせ、投資家の便宜を図る狙いがある。情報サービス・サイトのフォーブス・ドットコム(Forbes.com)、プライスウォーターハウスクーパーズなど1000社が同社サービスを導入した。

投資家の行動を把握
 b2iテクノロジーズ(b2i Technologies)は、企業のIR活動を支援する総合オンライン・サービス「IRオフィス(IROffice)」を開発した。ウェブサイトやコンタクト情報の管理、通信ツールなどを提供する。訪問者のサイト上の行動を把握し、理解度、反応、期待を視覚的にリアルタイムで表示することも出来る。仕組みはこうだ。いったんIRサイト、またはプレスリリース、電子メールで送信したファイルやハイパーリンクにアクセスした投資家やアナリストのサイト上の行動、リクエスト、フィードバックなどを継続的に全て記録する。これを分析することで、よく利用される情報と、情報閲覧後の行動、フィードバックを把握できる。IR担当者が投資家やアナリストと直接話をする時など、相手の過去の行動履歴がわかっていれば、より適切な対応も可能になるというわけだ。

IR関連サービスは、他にシェアホルダー・ドットコム(Shareholder.com)、CCBN、IRチャンネル(IRChannel)などが提供している。

ナンセンス不要
 ウェブサイトは、その構築自体が目的ではない。ところが、調査会社ニールセン・ノーマン・グループ(Nielsen Norman Group)によると、十分なIRの機能を果たさず、ただの飾りになっているサイトは少なくないとう。IRオン・ザ・ネット・ドットコム(IRontheNet.com)によると、ニールセンが20社のIRサイトの使い勝手を調べたところ、同調査に参加した投資家42人のうち、直前四半期の株式の最高値と最安値を検索できたのはわずかに23%、最新の四半期決算報告書を入手できたのは21%だった。株主総会の次回開催日を確認できたのは、半数に過ぎなかったという。

企業が発信する情報の中味、正確には「言語」に注意を喚起するのは、IR専門のPR会社アンドビヨンド・コミュニケーションズ(andBEYOND Communications)だ。同社は大企業100社のアニュアル・レポートの冒頭に掲載される「最高経営責任者(CEO)から株主へのメッセージ」を分析し、業績との関係を5年間にわたり調査した。その結果、企業の将来性について、メッセージから多くを読み取れることがわかったという。例えば、平易な言葉で率直、かつ具体的に分かり易く書かれたメッセージの企業は、CEOがリーダーシップを発揮し、将来性が高い。対照的に、痛いところや課題をのらりくらりと回避し、ナンセンスで分かり難い言葉を多用したメッセージの企業は、何らかの問題を隠している可能性があるという。

ポスト・エンロン時代の要請
表


 IR活動の一つとして、コーポレート・ガバナンス(企業統治)の取り組み状況を公開する企業も多い。企業統治の優劣を、投資判断の基準の一つとする機関投資家が増えているためだ。調査会社ガバナンス・メトリックス・インターナショナル(GMI)は7月末、世界15カ国、1600企業の企業統治の取り組み状況を評価した「グローバル企業統治格付け」を発表した。米国企業1000社とその他600社を対象に、(1)取締役会の説明責任、(2)情報開示、(3)経営陣の報酬、(4)株主権――など7分野について10点満点で評価したもので、マクドナルド、ファイザー、イーストマン・コダック、エクソン・モービルなど、米15社と加2社が満点を獲得した。

国別の平均点では、カナダが7.2点でトップ、日本は3.5点で最下位だった(右表参照)。日本企業の平均点が低いのは、米国の一般会計原則GAAP、または国際会計基準IASに基づく決算報告を行っていない点などが影響したためである。同様の格付けサービスは、コンサルティング会社インスティテューショナル・シェアホルダー・サービシズ(ISS)も提供している。国によって会計基準や規制が異なる企業を、同じ基準で評価することの有効性や評価方法については議論がわかれるが、企業統治の優劣が企業価値に与える影響については今後注意が必要だ。

■ ライター : 大村智子(ニューヨーク在住)

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