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PR業界祭典にみる立役者たち

公開日:2003年7月3日

 米PR業界の年に一度の祭典、シルバー・アンビル賞(Silver Anvil Award)の授賞式が6月5日、ニューヨーク市で開催された。

米国PR協会(Public Relations Society of America)が主催する同賞は、56年の歴史を持ち、最も権威ある米PR活動の功績顕彰プログラムの一つである。本年は企業、教育機関、政府機関、非営利団体などから664件の応募があり、危機コミュニケーション、地域貢献などのカテゴリー別に大賞41件と副賞50件が表彰された。また、大賞の中から本年の最優秀賞「ベスト・オブ・シルバー・アンビル賞」にミシガン州立大学のタバコ訴訟和解金分配に関わる法案反対運動と、郵便事業を統括する米郵政公社の炭疽(たんそ)菌危機対応キャンペーン(後述)の2件が引き分けで選出された。

ノウハウ共有と人的交流
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ビュッフェでは初対面の人間同士も
自己紹介や最近の話題に花を咲かせた

 この授賞式は、PRノウハウを共有し、総体的なPRスキルの向上に寄与させる目的のほかに、PR専門家による人的交流の場としての役割も担っている。当日は全米からPR会社とクライアントのプロジェクト担当者、家族、マスコミ関係者、大手PR会社のトップなど数百人が顔を揃え、まずは授賞式開始2時間前に振舞われるビュッフェで幕を開けた。

 久し振りの再会を喜んで近況報告を交わしたり、熱心に議論したりする姿が至る所に見受けられ、気分が昂揚したところで、いよいよ授賞式が始まる。

時代の縮図
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舞台袖からファイナリスト達が入場し、
拍手喝采で迎えられた

 授賞式前半のクライマックスは、開始早々にいきなりやって来た。ファイナリスト91件の代表者の入場だ。舞台の両袖から誇らしげな代表者が時折手を振りながら入場すると、満席の会場から上司、同僚、家族の拍手や掛け声が飛び、最後の1人が着席するまで止まなかった。(写真左)
 その後、カテゴリーごとに大賞と副賞が次々と発表され(写真下)、最後の発表が終わる頃には1時間が経過していた。

 今年のファイナリストは、2001年と2002年に実施されたプロジェクトが対象になっている。中味をみると、当時話題を集めた日用雑貨品の販促キャンペーン、乳がん自己診断の推進キャンペーン、タバコ訴訟、エイズ患者支援、連邦破産法第11条(日本の会社更生法に相当)の適用申請企業の再生取り組みなど、まさに時勢の縮図をみるようでもある。2001年9月の同時多発テロ後のボランティア活動、米軍の活動なども目を引き、会場では制服姿の兵士もみられた。

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受賞者は舞台に上がり、楯を受け取った

 景気が低迷するなか、企業倫理が大きく問われ、PRの真価が改めて見直された時期でもあった。2002年5月に連邦破産法第11条の適用を申請した通信関連会社は、事業回復に向けたPRキャンペーンが評価され、大賞を受賞した。フロリダ州から駆けつけたPRマネジャーは、「IT(情報技術)不況とテロの影響を受けて事業環境が厳しい中で成果をあげ、しかも、それを認められたことを大変嬉しく思う」と胸をはった。

炭疽菌危機対応キャンペーン
 炭疽菌事件は、同時テロの恐怖もまだ生々しい2001年10月に発生した。フロリダ州の新聞社、ニューヨークのテレビ局、上院院内総務事務所あてに炭疽菌入りの郵便物が届けられ、死者が出て、感染者の発症もみとめられた。この後、いったん安全宣言が出された後に郵政公社の職員2名が炭疽菌を吸って死亡。文字通り、戸口に迫るバイオテロの恐怖に全米が震撼した。郵便物の量は激減、国の重要な情報インフラの一つ、郵便システムの存続自体が危機に直面し、郵政公社職員80万人の生命の安全が脅かされる事態となった。そこで郵政公社はPR会社バーソン・マーステラ(Burson-Marsteller)と協力し、一般市民や職員などステークホルダーの信頼回復を目的としたPRキャンペーン戦略の立案に着手した。

戦略は、
 1)ステークホルダーごとに重要な情報とその在り処、伝達と更新の方法を決める
 2)メッセージを首尾一貫する
 3)迅速かつ継続的に情報を発信する
 4)不可解を分かり易く説明する
ことを基本に立案された。実行段階では、安全な郵便物取り扱い方法を説明した文書100万通を一般家庭に郵送し、ウェブ・サイトに連日更新情報を掲載、従業員用無料電話のホットラインを設置するなどし、ステークホルダーごとに情報伝達の窓口、方法を確立、迅速な情報提供とフィードバックの回収に努めた。

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最優秀賞の受賞者たち。写真中央の
男性が郵政公社のジェファー氏

 この結果、2001年12月に実施した世論調査では回答者の97%が郵政公社の対応を是認し、事件発生から1年後の2002年12月には郵便量が事件発生前とほぼ同じ1日7億通に回復した。

 郵政公社の広報担当副社長ジェファー氏は、「米国民の理解を得られたことが、早期回復の機動力になった」と振り返る。でも、最大の功労者は、郵政公社職員だったともいう。「郵便物に毎日触れる職員が安全性を確信し、自ら郵便物を仕分けして家庭に配達した。この姿が米国民に信頼感と安心感を与えたんだと思う」。従業員は最も影響力がある広報マン――この言葉が胸に響いた瞬間でもあった。

■ ライター : 大村智子(ニューヨーク在住)

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