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内部告発受付サービス

公開日:2003年6月5日

 「目安箱」ならぬ「内部告発箱」の設置期限まであと1年――。こう言われてピンと来る人は少ないかもしれないが、「企業改革法(サーベンス・オクスリー法)」の名を聞いて納得する人は意外に多いのではなかろうか。企業改革法は、エンロン事件に端を発して露呈した米企業の不正会計の実態に歯止めをかけるべく、昨年7月に成立した。不正行為に対する企業責任の追求の厳格化、監視体制の強化と監査法人の独立性確保、情報開示の推進などを定めた点が特徴だ。このなかで、従業員などから不正会計に関する告発を組織的に収集する、いわゆる内部告発収集システムの導入が、企業の不正行為発見と抑制手段として義務付けられた。来年4月に導入期限を控え、準備に追われる企業とは対照的に気炎をあげる業界がある。 彼らのビジネスはずばり、内部告発受付けサービスだ。

ウェブ・サービスの台頭
 内部告発受付けシステム自体は決して新しいものではなく、大企業を中心にこれまでも利用されてきた。ただし、従来のシステムと比較して、企業改革法では告発の受領、記録、処理・対応などの一連の運用責任を、企業経営陣ではなく取締役で組織する監査委員会に求めた点と、告発者が告発によって解雇や降格などの不利益を被らないように、匿名による告発と告発者保護に力を入れた点が大きく異なる。

 告発収集の方法は、無料電話のホットラインが一般的に使われてきた。電話は広く普及し使い勝手が高く、匿名性も高いのがその理由。これに対して最近は、ウェブを使った方法が注目を集めている。ウェブ・ベースのシステムでは、電話と異なり初めから文書で情報を受信できるため、詳細な情報収集が可能になり、告発者と受信者の間で意味の取り違えなど誤解の発生を最小限に抑えられる。さらに、告発文を受信後、調査の段階で告発者と連絡を取り易い点が受けている。また、告発文書をデータとして保存することで、情報の信憑性検証、パターン分析などの作業も効率化できる。もちろん、この背景には一般家庭にまで広がったパソコンの普及が挙げられる。理論的にはインターネットに接続さえ出来れば、何時でも、何処からでも告発文書を送付できる。会社や自宅のパソコンを使いたくなければ、図書館のパソコンからでもいいわけだ。

 システム検討の際のもう一つのキーワードは、サービスの外部委託である。いくら匿名とはいえ、告発する企業の内部の人間に告発文書を直接送るのは勇気がいるものだ。外部サービス会社を経由することで、多少なりともその圧力を軽減できる。一方、企業にとっても運用要員を常時確保するのは予算的に難しい。そこで、受信と検証作業を外部専門企業に委託する企業が増えている。

サービスの仕組み
 2000年設立のエシックスポイント(Ethicspoint)は、ウェブ・ベースのサービス提供会社である。企業改革法の成立以降、急速に注目を集め、AP通信によると100社、従業員数にして約25万人が同社のサービスを利用している。利用者は同社のウェブ・サイトに接続し、専用フォーマットを使って告発内容を記入、送付する。告発文書はまず同社が検証し、ウェブ・サイトを経由して告発者と質疑応答を繰り返し、情報の信憑性と事実関係の詳細な確認作業を行う。告発者は通常、送付から48時間後に特殊なパスワードを使って特定のサイトにログインし、同社からの質問を閲覧、それに回答し、対策の進捗状況を確認できる。こうした告発者との一連のやり取りには、ひやかし目的や嘘の告発を排除する役割もある。同社のサービスは、一定の検証作業を経て提言を盛り込んだ情報が、予め指定された取締役、社外監査員などに渡った時点で終了する。

 このほか、「取締役会に告ぐ」という意味の名のテル・ザ・ボード(Tell The Board)が、エシックスポイントと同じウェブ・ベースのサービスを提供。アイデア管理と規制準拠対応サービス提供のリザルター(Resultor)は、ナショナル・ホットライン・サービシズ(National Hotline Services、NHS)と提携し、ウェブと電話の両方で告発を受け付ける新サービスの提供を開始した。NHSは500社、従業員約100万人を顧客に抱えるホットライン・サービス提供の大手で、米保険社会福祉省の元監査官が92年に設立した。投資家向け広報ソリューション提供のシェアホルダー・ドット・コム(Shareholder.com)は、ホットライン、ウェブ、電子メールの3チャンネルに対応したサービスを4月に発表。世界900社、約900万人にサービスを提供するホットライン・サービス大手ピンカートン(Pinkerton)もウェブ経由で告発文書を確認できる付加価値サービスを追加導入するなど、ウェブ対応サービスの提供と多様化が進んでいる。

課題
 去る四月、児童ポルノ所持容疑で逮捕されたニューヨーク・ロースクール(法律専門大学院)の著名な教授が有罪を認め、退任する事件が起った。逮捕は、教授のパソコンを修理したITサービス会社の従業員2名による告発がきっかけだった。インフォメーション・ウィーク誌によると、その後この2名は解雇され、これを「告発に対する報復」として1,500万ドルの損害賠償を求めて元雇用主と法律専門大学院を提訴した。
企業にとって最終的な目標は、内部告発収集システムの導入ではなく、当然だが内部告発を利用した不正行為の早期発見と早期対策、長期的な悪習の撲滅と業務改善でなくてはならない。このためには、告発内容の検証・処理に関わるガイドラインの見直し、告発者保護の実態検証、告発内容の定期的検証と分析など、監査委員会を中心とした継続的な取り組みが必要である。利用率を高めるための啓蒙活動も欠かせない。先の事件は、解雇の原因が告発にあったかどうかは別として、企業にとって内部告発処理対策の重要性を改めて示した一つの事例といえるだろう。

■ ライター : 大村智子(ニューヨーク在住)

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