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米国アドバイザリー・ボードの最新動向

公開日:2003年4月1日

 「企業が持つ情報の9割強は、企業自身に関するものである。市場競争に勝つためには、外部の情報収集こそ必要である」―思想家で経営コンサルタントとしても著名なピーター・ドラッカー氏が語った言葉である。企業にとって最大のチャレンジは、未開の市場、技術、顧客に関する情報を収集、分析し、戦略に反映させることであるという。この思想の実践を目指すのが、社内外の眼と耳、頭脳を結集させる「アドバイザリー・ボード(AB)」である。日本では90年代後半から、経営諮問委員会の名前で企業や政府機関が設置を進めている。AB委員のスカウト、AB設立、管理・運営の専門会社、パートナー・コム(Partner Com Corporation*)のスーザン・S・スタウトバーグ(Susan S. Stautberg)社長に、ABの最新動向について聞いた。

テイラーメードの頭脳集団
――企業、政府機関、団体にとって、AB利用の利点は何ですか?
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 スーザン・S・スタウトバーグ氏
 (パートナー・コム社長)

 スタウトバーグ(以下、S)氏 2003年、企業に求められているのは戦略的ビジョンと実行力であり、これを支援するのがABです。ABは世界で最高レベルの頭脳集団と言ってよいでしょう。この頭脳集団が、特定の企業に、特定の課題向けにあつらえたアイデアや助言を提供し、実行に必要な人的コネクションをもたらす。AB活用の利点はここにあります。
 企業の多くは、新市場への参入準備としてABを設置しています。例えば、化粧品会社のエイボン(Avon)はウェルネス市場参入を掲げ、医師やマーケティングの専門家を招聘しABを設置しました。一般消費者市場や医療分野における動向を把握し、新製品のコンセプト開発や既存製品ラインの強化に生かすのが目的です。ABは、新市場進出に必要な戦略的提携候補先との接点としても機能しました。ニュージーランドでは、ABの委員が個人的に面識があった海外企業と政府との橋渡し役になり、ニュージーランドに新規投資と雇用創出機会をもたらした例があります。
 金融機関は従来、市場の物理的展開を目的にABを利用していました。現地の有識者を迎え入れ、現地の規制、商習慣、市場ニーズを掌握し、コネクションを手中にするためです。地元の有識者がAB委員であるということは、それだけで企業の認知度や信頼性向上につながります。AB設立は、非常に効果的なPR手段でもあるわけです。
 委員に求められるのは、頭脳であり人的コネクションです。CEO(最高経営者)の肩書きは必要ないんですね。

――ABの委員と社外取締役との違いは何ですか?
S氏 社外取締役と違い、ABの委員の助言には拘束力がなく、委員は一般的に法的、金銭的責任を負いません。任期も1年と短く、企業の戦略変換に伴い委員編成を柔軟に行える点が特徴です。このため、システムが形骸化する危険を最低限に抑えることが出来ます。
 高価な報酬も不要です。AB委員にかかるコストは一般的に、年に2-4回開催される委員会への参加経費と謝礼が1回あたり数千ドル程度です。企業によってはストックオプションや特別賞与を提供したり、自社製品やサービスを現物支給するところもあります。重要なことは、ABの委員にとって「委員就任のインセンチブはお金ではない」という事です。名声を得ることであり、ABの他の委員と交流することで自身のネットワークと知識を広げることなんです。社外取締役就任を視野に入れ、足掛り、または準備として参加する人もいますね。

――ABで検討される内容は、企業全般の戦略に関わるものから特定のプロジェクトに照準を合わせたものまで様々です。近年、顕著な傾向はありますか?
S氏 技術に焦点を当てた、技術ABを設置する企業が増えています。例えば、ヒューレット・パッカード(HP)は取締役の1人が「(HPは)インターネット革命の波に乗り遅れた」と発言したことがきっかけで、技術ABを設置しました。技術や市場の最先端動向を常に把握し、これを経営陣や取締役に知らしめることを目的としています。委員はHP社内外の人間で構成し、例えば大学教授、HPラボのシニア・フェロー、ヤフーの共同創立者、ベンチャー・キャピタリストなどが名を連ねています。
 保険大手のノースウェスタン・ミューチャル・ライフは、インターネット戦略の策定にあたり、電子商取引に関する実践的知識を持つ人材、例えば技術系会社のCEO、技術系専門誌のコラムニスト、大手企業のインターネット戦略担当者などから成るABを設置しました。
 フューチャーズ委員会も注目を集めています。「過去、企業を成功に導いた戦略が将来も通用するか」をテーマに、既存のビジネス・プランの健全性を検証するものです。成功した企業にこそ、必要な委員会と言えますね。

ABの声を聞く
――AB運営のポイント、課題は?
S氏 委員会の目的を明確にすること。そして、時間的余裕を十分に持って準備にあたることです。可能であれば、委員会の日程は3ヶ月前には決めたいですね。事前にアジェンダを用意し、資料を配布することは必須です。委員会では資料を説明するのではなく、建設的な議論に集中することが重要ですから。
 最も大切なことは、企業がABの助言、提言をしっかり聞くことです。少ないですが、企業側参加者が一方的に話し、委員に発言の機会を与えないケースもあります。また、ある大手ソフト開発会社の話ですが、「ユーザーの声が製品に反映されていない」という外部の反発に応えるため、ユーザーのフィードバック収集を目的に重要顧客とベンダーから成るABを設立しました。ところが、その会社の経営トップはABの検討結果を無視し、全く取り合わなかったのです。これではABを設置した意味がありません。
 企業には以前に増して先見性と健全な判断力、実行力が求められています。ABの上手な活用はそれ自体が企業の競争力になるということを、より広く知ってもらいたいですね。

■ ライター : 大村智子(ニューヨーク在住)

*パートナー・コム(http://www.partner-com.com
アドバイザリー・ボードの設立、運営・管理会社。委員のスカウト、委員会のアジェンダ作成、進行、議事録作成など、アドバイザリー・ボードの設立と運営に関わるサービスを包括的に提供。主なクライアントはバンク・オブ・アメリカ、シグナ、グローバル・アセット・マネジメント、AT&T、エイボンなど。PR会社のマイケル・ソロモン・アソシエイツ(第18回参照)と提携し、日系企業向けサービスも展開している。ニューヨーク州ニューヨーク市。

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