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日本の常識は米国の非常識!? ―米国メディア・リレーションズ―

公開日:2003年3月20日

 「わが社の製品を米国でも販売したい。とりあえず、日本で発表したニュースリリースを英訳して、マスコミ各社へ配布することから始めよう」――。こう考えている企業は、要注意だ。
言葉や文化が違う米国で、“日本の常識は米国の非常識”であることは、少なくない。日本企業の米国進出を、PR専門家の立場で20年間にわたって支援してきたマイケル・ソロモン氏(マイケル・ソロモン・アソシエイツ*社長)に、メディア・リレーションズの観点から日本企業が陥りやすい罠、日米メディア環境の違い、成功のためのアドバイスなどを聞いた。

――はじめに、日米のメディア環境の違いからお伺いします。日本では、巨大発行部数を誇る新聞が情報伝搬と世論形成に大きな影響力を持っています。米国ではどうですか?
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 マイケル・ソロモン氏
 (マイケル・ソロモン・アソシエイツ社長)

 ソロモン(以下、S)氏 印刷メディアの力が強いという点では、米国も日本と同じです。ただし、同じ印刷メディアでも、アプローチは米国の方が難しい。私見ですが、日本、特に大企業は、記者クラブなどを通じて日頃から業界記者と太いパイプがあり、記事化のアプローチがやり易い。これが、米国とは違う。米国では、有力なメディアやジャーナリストほど、独立性と客観性を重んじる傾向が強い。批判的な観点を持ち、要求も厳しい。生半可なアプローチでは、太刀打ちできません。
さらに、限られた記事スペースを獲得するためには、他企業との売込み競争にも勝たなければなりません。米国企業はメディア・リレーションズを含むパブリック・リレーションズ(PR)の重要性を早くから認識し、ノウハウや経験を蓄積して来ました。これら企業を相手にした競争は、容易ではありません。大手日刊紙のニューヨーク・タイムズやビジネスウィーク誌の記者は、1日あたり平均数百件のニュースリリースを受け取っていると聞きます。メディアの注目を得ることは、米国の企業であっても相当の工夫と労力が必要なんです。
 一方、専門誌の種類が多く、細分化が進んでいることも、米国の特徴です。上手く利用すれば、ニッチにターゲットを絞り込んだ効果的なPR活動が可能です。

――米国企業は、従来からPR活動に力を入れて来たということですが、日本企業とは具体的に何が違いますか?
S氏 米国企業のほとんどは、社内のPR担当者の他に、外部のPR会社を登用しています。PR会社を利用することで、外部のノウハウを効率的に取り込んでいるわけです。米国社会では、PRは専門の技量や経験を要する専門職として確立されています。人材の流動性も高く、個人の専門性や経験、技量が上手く拡散され、共有される仕組みも機能しています。
企業活動全体における、PRの優先度も非常に高い。この証拠に、有力企業ではCEOを含む経営陣トップが、PR活動へ積極的に参加しています。効果的なプレゼンテーションの方法を訓練する「メディア・トレーニング」は、トップの間ではごく一般的に受け入れられています。

PR戦略には、当事国の文化を反映させる
――米国市場への進出準備として、具体的に何が必要ですか?
S氏 一般的なことですが、まずは市場調査ですね。潜在顧客、競合企業とPR/マーケティング戦略、自社製品の強みと弱みなどを詳細に調べることが大切です。次に、調査結果に基づいてPR/マーケティング戦略を策定し、利用するメディアを決定します。有力メディアや業界関係者の意見を非公式に聞きながら戦略の有効性を検証し、必要であれば修正を行い、最終的に実行に移します。主要メディア、または記者ごとに、テーラーメイドの戦略が必要なこともありますね。
 日本で効果的だった戦略を、そのまま米国へ持ち込もうとする企業もありますが、これは間違いです。PR戦略は、当事国の文化を反映したものでなくては、効果はありません。日米の文化、言葉、そして前述のメディア環境の違いを甘く見ると、出だしから躓くことになるので要注意です。こうした場合、我々はクライアント企業の米国同業大手が取った戦略やニュースリリースを具体例に挙げ、日本のやり方との違いを説明し、米国市場にあったものを提案します。すると、大抵は理解して頂けますね。我々のようなPR会社は、クライアント企業とその他の関係者(メディアや対象顧客など)を結ぶ仲介者なんですよ。双方の文化とニーズを理解した上で、認識の違いを埋める努力をする。クライアント企業との強固な信頼関係が前提であることは、言うまでもありません。

――例えば、ニュースリリースの書き方ひとつにも、日米では違いがあると?
S氏 日本語を英語に翻訳しただけでは、メッセージは伝わりません。良いリリースとは、メッセージが明確、かつ簡潔に書いてあるものです。タイトルと1段落目で読み手の関心と注意を引き付けることが肝要です。長さは1ページがベストですね。また、専門用語や背景事情を知らない人が読んでも、製品の特徴、アプリケーション、なぜ重要なのかを理解出来るようでなければ。リリースは記者だけでなく、投資家や一般消費者の目にも触れるのですから。

米国でPR、実績を日本へ逆輸入も
――最後に、米国進出を狙う日本企業へアドバイスを。
S氏 「PR構想を、計画段階から考慮に入れること」。早ければ、早いほどいい。残念ながら、米国で製品を販売する直前になり、慌ててPR戦略の検討に入るという企業は少なくありません。「PR専門家のアドバイスを得ること」。市場環境、競争環境は日本と違います。専門家の経験やノウハウを、上手く活用して下さい。
「日本の本社から、米国法人や組織をマイクロマネージしないこと」。現地の幹部社員に、専門家の意見を聞いて検討できる余地や権限を、もっと与えるべきです。最後に、繰り返しになりますが、「日本で効果的だったPR/マーケティング戦略が、米国でも通用するとは思わないこと」。これらは、我々が日系企業と仕事をした経験から学んだことです。
米国でのPR活動は確かに困難が多いですが、成功した時の反響も大きいのです。例えば、日本の小さな新興企業が、一夜にして米国大企業の注目を集めたこともありました。日本で事業展開を狙う企業がニューヨークで記者発表会を行い、米メディアの報道実績を逆輸入して、日本で一気にブランド・イメージを確立した例もあります。PR会社のノウハウや経験を上手く活用し、企業には自らの専門分野で大いに活躍して欲しいですね。

■ ライター : 大村智子(ニューヨーク在住)

マイケル・ソロモン氏 経歴
コロンビア大学大学院で政治学と日本史を専攻、修士号と博士号を取得。その後、ミシガン州オークランド大学にて9年間、日本史の教鞭を執る。79年、PR業界へ転身し、在ニューヨークのPR会社、Cove Cooper Lewis社へ勤務。84年、独立してマイケル・ソロモン・アソシエイツを設立する。東京大学で1年間、日本史の研究に携わったこともある。

*マイケル・ソロモン・アソシエイツ(http://www.msapr.com
日米間のPRとコミュニケーション専門のPR会社。日米両国の文化と言語に通じたバイカルチャー、バイリンガルのスタッフが、在米日系企業や政府機関のPR活動を多角的に支援する。主なクライアントは、富士通、ジェトロ、住友化学、ツムラ、東北電力など。ニューヨーク州ニューヨーク市。

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