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米国流人事管理システムを考える

公開日:2002年10月1日

 余分なコストをかけずに従業員の生産性を高めたい――企業経営者なら誰でも一度は頭を抱えたに違いない。94年設立の人事コンサルティング会社Ima Consulting(イマ・コンサルティング、本社=ニューヨーク州ニューヨーク)はこれに対し、米国流人事管理システムを取り入れたソリューションを在米日系企業へ提供してきた。事業開始から5年間は、人事管理の重要性の啓蒙に明け暮れた。経済環境が厳しい今こそ「企業戦略における人事管理の役割を再認識するべき」という共同創業者兼ディレクターの奥山由実さんに、米国流システムについて聞いた。

21世紀の人事部
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イマ・コンサルティングのスタッフ。
写真右が奥山由実ディレクター。前列は共同創業者のジョン・クラム社長兼CEO(最高経営責任者)。

「創業当時から、21世紀は人事部が企業戦略の要になると言い続けてきました」――奥山さんは企業が成功するための前提条件として、人事専門家の育成を訴えてきた。「企業活動の最終ゴールである利益の達成は、全て人材次第」と言い切る背景には、グローバル化による市場競争の激化がある。製品やサービスの差別化による生き残りが困難になった今、「ユニークな新しい戦略を次々と打ち出す人材」を確保し、「やる気を維持させる職場環境作り」が一層重要になってきた。それを実現するのが優秀な人事専門家であり、人事管理システムであるという。

人事管理のポイント
人事管理システムとは、下記の制度を確立し、それぞれに相関関係を持たせたものである:

●就労規則の作成
●業務記述書の作成(従業員別)
●年間目標の設定(従業員別)
●業績評価

システムを最大限に活用するには、システム構築とシステムを使いこなすための管理職トレーニングを同時に実行する必要がある。過去の経験から、いずれか1点だけを優先させた企業には失敗例が多いという。

米国方式の特徴は、個人が達成した成果をより客観的に評価し、評価を報酬と連動させた点である。その基盤にあるのが、業務内容を具体的に明文化した業務記述書と年間目標、それに基づく業績評価の一連の流れである。奥山さんによると、この米国方式の特徴は多くの日系企業にとって「最も受け入れ難いコンセプト」でもあるという。日系企業は最近数年間に急速に米国方式を採用してきたが、依然、優秀な人ほど仕事が集中し、しかも同一労働同一賃金の考え方から成果が報酬に反映され難いというのが実感だ。年功序列制度の名残から、個人の生産性とは全く無縁の昇給も行われている。その結果、生産性とは反比例に慢性的なコスト上昇が続き、さらに困ったことに、人材流出によって非生産的な従業員ばかりが居残る最悪の状況を企業自らが招いていることは否定できない。

もう一つの特徴は、システム自体が管理職と一般社員の対話機会を増やすことを意図している点である。業務記述、年間目標設定、業績評価の各段階で双方の共通認識の確立を要求しており、両者はなかば強制的に対話せざるを得ない。そこで初めて既存の問題や潜在リスクが見えてくる。また意外に感じるかも知れないが、職務の責任範囲に関する管理職と一般社員の理解は「必ずしも同じではない」と奥山さんは指摘する。これでは企業の目標と一般社員の働きが全く噛み合わない、ちぐはぐな状態が生まれてもうなずける。社員のモラルは下がり生産性も低下、コストだけが膨らむ悪循環の根の一つはここにある。

多忙を言い訳に対話に時間をかけたがらない管理職は、現在の数時間の稼動と、将来起こり得る訴訟や生産性低下などのリスクがもたらす重大な損害を秤にかけているのと同じである。

アウトソーシングの活用
北米企業のうち、なんと8割はなんらかの形で人事管理機能を専門企業へアウトソースしていると言われている。業務効率化によるコスト削減と、専門家のノウハウを活かした積極的な職場環境作りが目的だ。奥山さんは、「経済環境が厳しい今こそ、企業は人事コンサルタント、弁護士、会計士など外部専門ソースを上手に使うべき」と説く。短時間で最大の効果を上げるには、アウトソースの活用が最良の方法だという。使い方については「専門企業へ機能を丸投げしない」、専門企業へはシステム構築と運用など実務、戦略策定、企画提案を委託するだけで「意思決定権はあくまで企業が持つこと」とし、手放しの誤った認識に警鐘を鳴らす。

さらに、「課題は一夜では解決しない」とも。トップダウンで管理職の意識を統一し、半年後、1年後、2年後など節目ごとに達成可能な目標を定めてじっくり取り組む姿勢が大切だ。

セクシャル・ハラスメント規制、日本版401K確定拠出型年金の導入など、最近の日本企業には米国の人事制度を部分的に導入する傾向がみてとれる。「5年もすれば、日本の人事管理システムは米国のものとほぼ同じになっている可能性がある」と奥山さん。そのためにも、米国流システムの研究は日本企業にとって非常に意味があるという。

イマが行った調査によると、米国で従業員が企業を選ぶ理由の第1位は「企業で自分が必要とされること」だった。「給与、福利厚生など待遇が良いこと」は第2位だった。働き甲斐を求める従業員に理想的な職場環境を提供する――そのための人事管理の重要性が今、急速に再認識されている。

■ ライター : 大村智子(ニューヨーク在住)

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