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バーチャル・ホールウェイで対話する

公開日:2002年3月1日

 インターネットの普及は、人々の生活や組織、企業に様々な変化をもたらした。例えば企業ではインターネットを経由して経営、企画、設計、調達、製造、販売、顧客管理など企業の活動にかかわる情報を関係者間で瞬時に共有する体制が可能になった。製品やサービスは、仲介業者を通さず、ネットから顧客へ直接提供できるようになった。このような変化は製造、金融、マーケティングなど業界の垣根を超えて、企業と従業員、顧客、取引先企業など企業活動を取り巻くあらゆる利害関係者間のバランスをも根底から覆しつつある。一方、インターネットに代表される情報技術(IT)の進歩が企業に変革を迫るなか、唯一変わらないものもある。全ての変化の原動力は「コミュニケーションにある」ということである。

対話のちから
PHOTO
GCI BoxenbaumGratesの
Chuck Reece氏

 「対話以上に有効なコミュニケーション・ツールはありません」というのは、社内コミュニケーションの専門コンサルティング会社、GCI BoxenbaumGratesのChuck Reeceシニア・バイス・プレジデント。もともと独立したコンサルティング企業であったBoxenbaumGratesを、PR大手Grey Global Group傘下の広告代理店大手GCI Groupが3年前に買収し、一部門として統合した。GCI BoxenbaumGratesは、企業の合併・買収、リストラ、事業の方針転換、市場環境の悪化や競争激化など、企業が直面するありとあらゆる変化に対して、それに立ち向かうための企業としてのビジョンと実現のための戦略策定を、社内コミュニケーションの視点からサポートしている。顧客には米自動車ビッグスリーの一つ、ゼネラル・モーターズ(GM)、保険大手Aflacなど、自動車、飲料、航空、技術などFortune500に名を連ねる大手が多く名をつらねる。インターネットの爆発的な普及、ドットコム・バブルの崩壊とその後に続く景気低迷など、企業環境の激変に悲鳴をあげる企業が助けを求めて目を向けたものの一つが、社内コミュニケーションの改善と強化だったという。

最も影響力がある情報源
 変化に立ち向かい、継続して成長するためのビジョンと、実現のために必要となる企業文化の変化――GCI BozenbaumGratesのノウハウは、これらを従業員に迅速かつ正確に伝えて、ともに変化を体験しつつ加速する手法にある。状況の調査・分析から実行・評価まで独自の手法をもち、「実現の基盤となるのはコミュニケ―ション。特に上級管理者層と中間管理者層との(双方向型の)対話が重要」(Reece氏)という。これは「一般従業員にとって、最も影響力をもつ情報源は直属の上司、つまり中間管理者層である」との考えに基づいている。そのため同社は顧客企業に対し、上級管理者層と中間管理者層の少人数グループによる定期的な会議を開催し、まずは中間管理者層による現状と対策の理解度を高めることを薦めている。インターネットやイントラネットの普及で社内の情報流通のスピード化は進んだが、これだけにコミュニケーションの機能をまかせるのは間違いとも。「情報流通そのものには、変化を起こす力はない」。実際に人を動かすには、面と向き合った双方向型の会話が不可欠であるという。

バーチャル・ホールウェイ
 コミュニケーション・ツールの一つとしてインターネットやイントラネットの利用が広がっているのは事実。さらに、その役割は単なる「情報発信の場」から「対話の場」へと変化している。世界的に賞賛される企業ほど、コミュニケーションの重要性に対する理解は深く、イントラネットの使い方も上手い。中でも特に高く評価されているのがIBMのイントラネットである。キーワードは「パーソナル化」。従業員は、自分が参加しているプロジェクト、関連プロジェクト、プロジェクト参加者のプロファイル、予定表、関連リンクなど、個人のニーズにあった情報を瞬時に得られる仕組みになっている。
GCI BoxenbaumGratesの顧客の一つ、GMは2001年末、全米の社員30万人のオンライン化を初めて実現した。一人一台のパソコン環境にない工場勤務者などのために、自宅や社内のパソコンから社内情報へアクセスできる従業員ポータルを開発した。情報閲覧や検索ができる他、住所や福利厚生など個人情報の変更もネット上で可能にした。
いずれも根底にあるのは「パーソナル化」と「対話の促進」である。世界各地に分散する関連プロジェクトの参加者や共通の興味を持つ従業員の「出会いの場」「対話の場」をネット上に提供し、知識の共有を図るのが狙いである。イントラネットを「バーチャル・ホールウェイ(仮想廊下)」(Reece氏)にみたてて考えるとわかり易い。技術のブレークスルーのヒントや問題解決の糸口は、社内の廊下ですれ違った人から偶然耳にした情報、食堂で隣り合わせに座った人との会話の中など、予期せぬ偶然の出会いから生まれることは少なくない。イントラネットはこうした「偶然の出会い」を時間と場所を超えて作り出す――従来の情報源としての受動的な機能から、より能動的な機能へと、イントラネットそのものに寄せる期待が変化している。

危機対応のコミュニケーション
 Enron事件の影響を受けて、米国民の企業に対する不信感は業界を超えて広がっている。PR会社Golin/Harris Internationalが25の業界を対象に行った信頼度調査によると、石油・ガス、保険、ウォール街(金融)、航空/旅行など14の業界で深刻な信頼度の低下が報告された。厳しい状況にあって企業にとって最も大切なことは「従業員に対して現状を正直かつオープンに説明すること」(Reece氏)という。「その場限りの体裁を繕う行為は全くの逆効果」。社内広報の基本を身をもって痛感、実践しているのが、会計事務所のアンダーセン。Enronの監査を担当したアンダーセンは不正会計を見逃したとの疑惑がかかり、顧客離れが加速している。Managing PartnerのGrover Wray氏はニューズレター「Workfoce Week」の取材に対し、「(広報責任者としての)最優先事項は、会社の現状と変化を従業員に正しく、迅速に伝えること」と答えている。その結果、従業員の事件後の離職率は1年前よりも低レベルに抑えられているという。

■ ライター : 大村智子(ニューヨーク在住)

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