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Eラーニングのすすめ

公開日:2001年12月1日

 企業にとって最も重要な投資分野の一つに、社員教育があげられる。社員教育はその名の通り、企業の資産である社員を、企業戦略に沿って最大限に活かすために行う教育である。新入社員研修にはじまり、特定のテーマを設定した研修プログラムの実施、社内報や製品カタログなどの印刷物配布まで、その手法は多岐にわたる。最近では、社員がいつ、どこにいても学習できる環境を提供する「Eラーニング」が注目を集めている。

成長が期待されるEラーニング市場
 Eラーニングとは、一言で表現すると「インターネットやイントラネットを利用した学習」。講師と受講者が物理的に一つの場所に集まる対面型の研修プログラムと異なり、いつでも、どこからでも、必要なプログラムを選んで受講できたり、情報を閲覧できる。最近ではIT(情報技術)の進歩やネットワークの広帯域化を背景に、ビデオ教材(コンテンツ)や、社員が実際に製品を“体験”できる社員参加型コンテンツの利用も始まっている。企業のグローバル化が進む中、複数の拠点で迅速に情報を共有したり、ITスキルやビジネス・スキルの習得を支援することで、人材の効率的な育成を狙っている。
 米国では、クリントン政権が教育機関向けのEラーニング(厳密には、物理的に離れた講師と学生に、ネットワーク経由で学習環境を提供する“遠隔教育”)導入を推進した。Eラーニング専門の大学機関も誕生し、注目度は高い。ただし成長率では、教育機関向けを追い抜いて、企業向けEラーニング市場の拡大加速が予想されている。調査会社IDCが2月に発表した調査によると、企業向けEラーニング市場は99年の20億ドルから2004年には11倍の230億ドルへ急拡大するという。規模で最大の市場は北米で、全体の75%を占める。成長率が高いのは、現在の市場規模が小さいためでもある。業界専門誌のLearning CircuitsとT+D Magazineの調べによると、2001年上半期の社内教育用予算のうち、Eラーニングに使われたのは「20%以下」と答えた企業が6割を超えた。Eラーニングに対する認知度は高いが「本格的な普及にはまだ至らない」というのが現状だ。

Eラーニング導入の利点と課題
 「業界誌e-learning magazine(www.elearningmag.com)は、米国で4月に開催されたEラーニング業界会議の参加者に、Eラーニング導入の利点と課題をアンケート調査した(図1、図2。 複数回答可)。これによると、回答者の80%が導入の利点として「時間と場所に束縛されず学習できる」、65%が「経費を削減できる」と回答した。経費の削減は、物理的なセミナー開催地の確保や準備にかかる費用、参加者の旅費や稼動時間を節約できるためである。Eラーニングではコンテンツを集中管理できることから、コンテンツの重複を無くすなど効率的な制作が可能になり、制作コストも削減できる。
 一方、導入や利用に際しての課題や不具合としては「帯域幅の確保が難しい」や「双方向性に欠ける」などの回答が多かった。回答者の34%は「費用対効果がわかりにくい」点を指摘した。例えば経費削減効果は比較的わかり易いが、社員のスキルの習熟度や業務改善などの効果は測定が難しい。これに対して企業の多くは、社員からのフィードバックを一つの判断材料としているようだ。

技術系から非技術系へ
 Eラーニングは当初、業務用ソフトウエアやハードウェアの使い方を教える技術系のコンテンツが中心だった。ところが最近では、ビジネス・スキルの向上や企業の戦略周知を目的とした非技術系のコンテンツが増えている。管理職を対象とした意思決定プロセスの育成や、資格取得や生涯教育を支援するプログラムもある。景気低迷の影響を受けて、経営状況が悪化した企業による事業統廃合や人員削減が相次ぐなか、社員に対して、企業の今後の方向性と戦略を正確かつ迅速に伝える手段としてもEラーニングは使われている。
 世界121ヶ国で2万9000店舗を経営するファーストフード大手のMcDonald’sは、企業理念の浸透や業務支援を目的に、5カ国語に対応したEラーニング・システムの試験運用を開始した。社員に何時でも学習できる柔軟性を与えることで、学習効果を高めることが出来るという。今後はコンテンツを順次拡充する考えだ。
日用雑貨大手のProcter & Gambleは、70ヶ国、10万人の社員向けにEラーニング・システムを導入した。システムを提供したSaba Softwareによると、経費削減効果は税引き後利益で5年間、1400万ドルを見込んでいる。また、社員に学習や自己能力向上の機会を提供したことで社員のやる気が喚起され、すでに離職率が低下する効果があった。

高まる人的サポートの重要性
 社員教育におけるITの利用拡大を受けて、「中間管理職不要論」という、古くて新しい問題が再浮上した。「業務に係る質問や悩みに直面したら、イントラネットやインターネットを使って答えやアドバイスをみつける」「重要なメッセージは、イントラネット経由で知らせたい人に瞬時に伝える」――つまり、中間管理職の従来の役割がイントラネットに取ってかわられたというものだ。一方で、中間管理職の役割は一層重要度を増すという声がある。例えばEラーニングでは、個々の社員が学習のペースを決めることができる。その結果、やる気のある社員が伸びる一方で、落ちこぼれる社員も出てくる。そこで、社員一人ひとりにあった学習のペースや目標を設定し、モチベイションを高めながら達成を支援する体制が重要になってくる。ITを駆使したEラーニング導入も、効果を最大限に高めるためには、業務に精通した中間管理職の人的サポートと熱意が必要不可欠といえそうだ。

■ ライター : 大村智子(ニューヨーク在住)

図1 e-learning導入の利点 (複数回答)
グラフ1

図2 e-learning導入の課題 (複数回答)
グラフ1

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