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最も影響力をもつ広報マン

公開日:2001年10月1日

 米国時間9月11日、卑劣な同時多発テロが米国で発生した。読者の皆様とその関係者のご無事を心よりお祈りすると同時に、多数の犠牲者の方に哀悼の意を表します。

テロ攻撃から1ヶ月、米国では復興に向けた動きが急ピッチで進んでいる。とはいえ、テロ攻撃によって受けた影響は業界や企業によって様々で、復興のスピードは一様ではない。直後に大打撃を受けたのは旅行関連業界だった。航空業界は運行停止を余儀なくされ、再開後も9月末時点で搭乗率は50%前後しかなく、客足が戻らない。大手航空各社は9月末までに8万人を超える人員削減計画を発表。旅行・観光産業は1700万人が従事する国内第2の雇用創出産業であり、その経営不振の影響は、業界を超える雇用不安となって広がっている。懸命に復興に取り組む米企業の礎となるのは、企業と従業員の固い信頼関係に他ならない。信頼関係の有無やその強さは、企業の明暗をわけかねない重要なバロメーターの一つになっている。

危機対応のポイント
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PRSAのCatherine A. Bolton社長兼COO

 事件発生直後、多くの企業が対策本部を設置して対応に奔走した。米国のPublic Relations専門家の業界団体「Public Relations Society of America (PRSA)」は、24時間対応の緊急体制を敷いてPublic Relations(PR)専門家の立場から企業へ危機対応のアドバイスを提供し、PR担当者がいない中小企業にはボランティアの専門家を派遣するなどの支援を行っている。PRSAの社長兼COO(最高業務責任者)のCatherine A. Bolton氏は、PRの観点から、テロや大規模災害、工場の事故などの危機発生時にとるべき対応のポイントとして、優先度の高いものから下記2点を挙げる。これらは危機管理の基本であり、読者の多くの皆様は既に実践されていることと思うが、Employee Relationsの重要性を再確認するために改めて整理したい。

(1)最優先・最重要事項:「従業員の安否確認」と「従業員への状況説明」
速やかに従業員の安否を確認し、事件や事故の事実関係、今後の対応などを説明する。
(2)「外部への情報開示」
顧客、関連企業、投資家、金融アナリスト、マスコミ関係者など外部関係者へ状況を説明する。特に株式上場企業の場合、「企業は通常通り業務を行っていること」「状況を正しく把握していること」「有効な対応策があること」などを伝え、市場のパニック発生と状況悪化を防がなければならない。

以上を実行するためには、日頃から危機発生時の指揮系統を整備し、かつ、重要なコンタクト情報を物理的に2拠点以上の安全な場所に保管しておくことが必要だ。コンタクト情報とは、従業員、関連会社、投資家、金融アナリスト、マスコミ関係者への連絡先である。
 最優先・最重要事項が「従業員の安否確認」と「従業員への状況説明」であることは、「企業の危機を救い、復興を支えるのは従業員」との考えに基づいている。

従業員は企業の広報マン
 「世界で最も賞賛される経営者ほど、Employee Relationsを含めてコミュニケーションに優れている」とBolton氏。例えばGeneral Electricを最近退任した前CEO(最高経営責任者)のJack Welch氏、IBMの会長兼CEOのLouis V. Gerstner氏は企業活動におけるコミュニケーションの重要性を認識し、自ら強いリーダーシップを発揮してその向上に取り組んでいる。Employee Relations活動の目的は「企業と従業員の信頼関係の構築」という。なぜ信頼関係の構築が重要なのか。Bolton氏の説明は、下記の如く明確である。

(1)信頼関係に裏打ちされた職場は、従業員にやりがいと誇りを与え、生産性を向上させる
(2)従業員は企業の最も重要かつ有効な広報マンである

全ての従業員は、顧客、関連企業、地域社会とのコンタクトポイントであり、企業の顔である。「不満や問題点を抱えた従業員が、企業に取り合ってもらえないとなると、次は誰に話しに行きますか?新聞社やテレビ局などのマスコミであり、地域社会です」とBolton氏。その反対に、企業が危機に直面したとき、それを救うことが出来るのも従業員という。「問題発生時には、従業員の口から語られる企業の誠実な姿勢や対応策、企業に対する信頼感が、市場や地域社会における企業の信頼回復に最も貢献する」からである。

最大の障害は無関心
 「残念なことに、従業員とのコミュニケーションが上手な企業と下手な企業の格差は広がりつつある」とBolton氏は指摘する。テロ事件はその格差を白日のもとにさらし、復興に向かう企業の明暗をもわけかねない。事件後、一丸となって復興に取り組む企業の様子が新聞やテレビで報じられる一方、企業に対する従業員の不満や憤りの声も多く聞かれた。例えば解雇通告を受けた従業員からは「経営の失敗を、テロ事件を隠れ蓑に解雇という形で従業員におしつけた」「退職金未払いの口実にされた」、事件現場近くの企業からは「部下には何ら指示を与えず、上司が一目散に避難した」「営業成績が少しでも悪くなるとすぐに国際電話をかけてきて叱責する社長から、事件後、従業員の安否を気遣う電話は一度もない」など。
 信頼関係の構築を究極の目的としたEmployee Relations活動を推進するには、経営者の理解とリーダーシップが必要不可欠である。そのための最大の障害は「経営者の意識の低さ」にあるという。「Employee Relationsを実践するためには、テクニックや予算は問題ではありません。まずは経営者がその重要性を認識することが大切です」とBolton氏。次回からは再び米企業のEmployee Relationsの取り組み事例を紹介する。        

■ ライター : 大村智子(ニューヨーク在住)

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