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シリコンバレーの魂が守り抜く「財産」

公開日:2001年9月1日

 「上司から正当に能力を評価してもらえない」「毎朝、会社のことを考えると憂鬱で布団から起き出せない」――会社勤めをした人なら誰でも、一度は経験したに違いない憤りや不満、そして無力感。従業員の声にならない叫びに耳を傾けて、企業と従業員、あるいは組織・団体とその構成員との間に信頼関係を築く。それを礎に職場環境の改善と活性化を図り、企業と個人双方の成長と生産性向上を目指す活動が「Employee Relations」である。2000年春の米国ハイテク株の大暴落から早1年と半年がたち、いよいよ先行き不透明感が増す米国企業は、再び企業活動の根底にある「企業と人材」に目を向け始めた。このシリーズでは、信頼関係の構築と成長、そして時に景気後退から厳しい決断を迫られる米企業や組織・団体のEmployee Relations活動事例を紹介する。

技術とアイデアの生産工場
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メンローパークにある63エーカーの広大なキャンパス

 「シリコンバレーの魂」と呼ばれる研究機関がある。SRI International(以下SRI)――シリコンバレーという名前が生まれるずっと以前から、数々の発明や技術革新を世の中に送り出してきた。
 SRI(カリフォルニア州メンローパーク)は1946年にスタンフォード大学付属の研究所として発足し、1970年に大学から分離独立した。世界に1400人の従業員を擁し、情報サイエンス、通信技術、医薬・バイオなど多岐にわたる分野で先端技術の研究開発や調査を行う、世界でも最も大きな非営利独立研究機関の一つである。1億6400万ドルの収入の大半は政府機関からの調査委託だが、最近では商業化を目的とした技術開発や事業創出に力を入れており、技術とアイデアの生産エンジンとして、シリコンバレーの興隆へ貢献している。
 SRIの強みは、継続して技術革新をもたらす「人材」にほかならない。最近の景気減速で状況は変わってきたが、インターネット関連企業がIPO(新規株式公開)を果たし、ストックオプションをインセンチブに次々と人材を引き寄せるのを横目に、SRIは限られた予算の中で、給料面以外で人材を魅了する必要があった。そこで力を入れたのが福利厚生制度の充実と、企業と従業員間のコミュニケーションを基本とする快適な職場環境とモチベイションの提供である。

財産は人材
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人事担当シニア・ディレクターのJeanie Tooker氏

 「従業員に入社から退職まで快適に仕事をしてもらい、結果として生産性を高めることが最大の目的です」と人事担当シニア・ディレクターのJeanie Tooker氏。日常のささいな悩みから業務上の問題まで、全てに目を配って解決に向かわせるのがTooker氏の責任だ。
 2001年1月から現在も継続中の「Management Development Program」は、Tooker氏がEmployee Relationsの観点から今最も注目するプログラムだ。これは管理職の管理能力向上を目指すもので、「人材は最重要財産」とするSRIの理念を反映している。外部コンサルタントと共同で作成したプログラムは、「人材を発見し、就労意欲を鼓舞して目的を与え、導き、創造性を最大限に生かせるかどうかは、管理職の技量によるところが大きい」という認識に基づいている。このプログラムでは、「目標設定」、「チームワーク構築」、「コミュニケ―ション」など10の能力分野に分けて、部下や同僚が管理職を1~7段階で評価する。目的は下記の3点:
1 : 得意事項と改善事項の発見
2 : 改善事項への取り組み優先度の設定
3 : 改善と更なる能力向上に向けたアクションプランの作成
 1~3は全て、管理職本人とその上司、コンサルタントが相談しながら実行する。アクションプランを作成したら、半年後にその進捗状況をコンサルタントと確認する。例外はない。トップレベルの評価から始めたこのプログラムは、もちろん、CEO(最高経営責任者)も対象だ。プログラムの成果は一朝一夕にで現れるものではない。プログラム参加者が主旨を正しく理解し、改善事項に対して積極的に取り組みを開始したことが、これまでの成果だ。このプログラムは、今後も長期的に継続する考えだ。

すべてはコミュニケーションから
 Tooker氏にとって、Employee Relationsの基本は「コミュニケーション」である。これは社長兼CEOのCurtis R. Carlson氏が率先して実行していることでもある。Carlson氏は毎月、順番を決めて少人数のマネジャーとランチを共にして問題点や改善事項を話し合う。2ヶ月に一度はマネジャーによる活動報告会を、業績報告会は毎月開催し、希望する従業員は誰でも参加できる。トップと従業員が情報を共有し、さらに直接対話できる機会を設けるのが狙いだ。
 これまでの経験からTooker氏自身がEmployee Relations実施にあたって学んだこと、それは「小さなこと、そして最も必要なことから目的を明確にして順次取りかかること」という。たとえ目的が職場環境の向上であっても「予算や時間をあまりにも要するプログラムでは、従業員の賛同や協力は得られない」からだ。
 過去には業績悪化から、やむを得ず人員解雇に踏み切ったこともあった。米景気は減速感が強く、SRIが位置するシリコンバレーでは連日、企業による従業員解雇が続く。「周辺環境が厳しい時こそ、コミュニケーションを密に取って、従業員に安心感を与えることが大切なんです」。Tooker氏の言葉にはとても重みがあった。

LINE

9月11日、ニューヨーク市とワシントンDCで同時多発テロが発生した。ワシントンDCに事務所をおくSRIは即日、従業員とその関係者の安否確認作業にかかった。Carlson社長兼CEOは全従業員にメッセージを送り、サポートの提供を約束した。従業員は大切な家族の一員との思いが、そこにはある。
■ ライター : 大村智子(ニューヨーク在住)

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