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米国PR大賞―サンディエゴ市の危機管理コミュニケーション

公開日:2008年6月19日

優れたパブリック・リレーションズ(PR)キャンペーンを表彰する2008年度シルバー・アンビル賞の授賞式(PRSA=米国PR協会主催)が6月5日、ニューヨーク市で開催された。1946年に第1回が開催された歴史ある賞で、今年は59のカテゴリーに対し、875件がエントリーされた。受賞プロジェクトの内容は一般公開され、PR業界全体の底上げに役立てられている。


シルバー・アンビル授賞式の様子。全米各地からPR関係者が集まった。

<世相を反映したキャンペーンがずらり>

受賞キャンペーンには、その年の世相を反映したものがずらりと並ぶ。今年は、長引くイラク戦争に対する焦りや不安を背景に、退役軍人の社会復帰を支援する「リトル・シーザーズ退役軍人プログラム(Little Caesars Veterans Program)」が大賞に選ばれた。

ピザ・チェーン経営のリトル・シーザーズ・エンタープライズ(Little Caesars Enterprises)が実施したもので、自らも退役軍人である創業者兼会長のマイケル・イリッチ氏が考案し、経営陣に呼びかけて実現した。


大賞を受賞したリトル・シーザーズ退役軍人プログラム関係者

同社によると、同プログラムは2006年11月に始動し、これまでに退役軍人24人とフランチャイズ契約を締結し、6店舗がオープンした。プログラムを紹介するウェブサイトのヒット数は7万件に達し、1400件の問い合わせがあったという。当初からマスコミの注目度が高く、ドミノズ・ピザ(Domino’s Pizza)といった競合各社も、相次ぎ同様のプログラムを導入。退役軍人問題に焦点を当てるきっかけを作るとともに、リトル・シーザーズという企業ブランドの認知度向上に貢献した。社員の忠誠心や意欲も向上するなど、想定外の効果も大きかったという。

<過去の教訓を活かす―サンディエゴ市の取り組み>

PR分野で特に顕著な働きをした個人や団体に贈られるPRプロフェッショナル大賞は、カリフォルニア州サンディエゴ市のコミュニケーション担当班が受賞した。豊かな自然に恵まれ、ハイテク関連企業が多いことでも知られる同市は、昨年10月、大規模な山火事に襲われ、19万8000エーカーが焼失した。発生から3日間で約20万人が避難し、多くの建物が倒壊した。ジェリー・サンダーズ市長直属のコミュニケーション班は、直ちに危機管理計画を立ち上げ、非難住民をはじめ、マスコミや支援を申し出た企業・団体、米国内外への情報発信に努め、住民の安全と復旧に貢献したことが評価された。

サンダーズ市長の指示はただひとつ、正確かつ詳細な情報を、タイムリーかつ頻繁に、1日24時間体制で提供することだった。そのため、市と郡の共同対策本部や、避難所に指定されたスタジアムといった要所に情報担当者を配置し、マスコミ対応にあたったほか、定期的にプレスリリースを出し、ウェブサイトを利用した情報提供を行った。

サンディエゴ市の危機管理計画は、2003年に同市で起こった山火事と、2005年に米国南部を襲ったハリケーン「カトリーナ」の教訓を生かして作成された。カトリーナでは、初動の遅れや、避難所の悪質な環境が問題視された。

サンディエゴ市は今回、避難住民1万4000人を収容したスタジアムをマスコミに公開し、避難住民の窮状を訴え、必要な物資やボランティアの獲得に活かしている。

同市のコミュニケーション・ディレクターのフレッド・サインス氏によると、情報発信者の立場で特に配慮したのは、

  1. 住民と救急隊員のストーリーを伝えること
  2. マスコミにロジスティクスを提供すること
  3. 避難所をメディアに公開すること
  4. 同市の観光産業を保護するため、観光施設は被害を受けておらず、営業していることを伝えること

だった。


サンディエゴ市のコミュニケーション・ディレクター、フレッド・サインス氏(左)と、PRSA会長のジェフリー・ユリン氏

<実力が試されるITシステム>

サンディエゴ市は、全米で最も有線通信インフラが発達した土地としても知られる。今回の火事では、住民への情報伝達手段として、ウェブサイトをはじめ、電子メールやテキスト・メッセージが多いに活躍した。避難者を登録したデータベースも構築・公開され、安否確認や、チャットによる連絡手段も確保された。

中でも注目されたのが、救急隊員間の情報共有や調整に利用されたウェブサイト・ベースのシステムと、緊急警報自動配信システムのリバース911(Reverse911)の実力だった。いずれも本格的に利用されるのは、今回が初めてだった。

リバース911は、電話会社のデータベースと地理情報システム(GIS)を利用する。避難地域が指定されると、その地域の世帯が抽出され、電話による避難勧告が出される仕組み。1時間に最大24万世帯に電話をかけられる。一方の情報共有システムは、オンライン掲示板のようなもので、GIS地図などのファイル共有もできるという。

同市は、ITシステム、特にリバース911によって、人的被害が最小限に抑えられたとみている。(大村智子)


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