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米国PR大賞―児童のぜんそく撲滅キャンペーン

公開日:2007年6月21日

優れたパブリック・リレーションズ・プログラムに贈られる2007年度シルバー・アンビル賞の授賞式(米国PR協会主催)が6月14日、ニューヨーク市で開催され、大賞に大手PR会社、フライシュマン・ヒラード(Fleishman-Hillard、FH)の地域貢献プログラム「ERASE」が選ばれた。1946年に設立された同賞は、毎年約600件のエントリーを業界関係者約150名から成る審査員団が評価し、約60のカテゴリごとに優秀賞と準優秀賞を選出する。受賞プロジェクトは、PR業界のベストプラクティスとして公開される。今年は、AT&T、イーストマン・コダック、マジック・ジョンソン財団など、企業や非営利団体による104のエントリーが最終選考に残った。

―従業員有志の活動が大きなうねりに

ERASE(Eradicating Respiratory Asthma in Schools To Help Children Excel:児童のぜんそく撲滅と学業支援)は、ニューヨーク市内のぜんそく児童の健康改善と教育支援を目的に、2005~2006年にかけて、市内の公立校2校で試験運用された。FHの従業員有志が地元コミュニティのために立ち上がり、市や学校関係者、医師の協力を得て実現したERASEは、テレビや印刷物を利用した露出度の高い大規模なキャンペーンが中心のエントリー作品の中にあって、ある意味異色の存在だ。企業クライアントを持たず、資金の限られた環境での成功は、緻密な計画と、それを実行した有志の熱意、そしてコミュニティの協力の賜物だった。

シルバー・アンビル授賞式には、全米から約300名のPR業界関係者が出席した。

シルバー・アンビル授賞式には、全米から約300名のPR業界関係者が出席した

プログラムの発端は、FHの従業員が、ニューヨーク市内のぜんそく児童の治療と教育環境の悪化に関心を持ったことだった。ぜんそくを患う子供たちの数は全米で900万名に達し、ぜんそくは、児童の入院と長期欠席の要因になっている。病気は健康だけでなく、子供たちの教育機会も奪っていた。そこで、ぜんそく児童の親でもある従業員を中心に有志が集結し、特に医療サービスを十分に受けられない恵まれない子供たちに対し、医療サービスと、ぜんそくやアレルギーの治療や管理に関する情報を提供するプログラム作りに着手した。有志の1人は、「私自身も幼い子を持つ母親として、ぜんそくで苦しむ子供たちを黙って見てはいられなかった」と、活動に参加した動機を説明する。

―産官学が連携

有志たちはまず、ぜんそく治療の現状を把握するため、関係者へのインタビューや文献による調査を実施した。その結果、家庭の経済的格差が、そのまま治療の質に反映されていることがわかった。例えば、ニューヨーク市の最低所得者コミュニティでは、子供たちはぜんそく専門医の治療を受ける機会がほとんどなく、一般診療も十分に受けられない状態で症状を悪化させ、入院率が全米平均の4倍と高かった。

治療を受けられないから症状が悪化して入院し、教育機会も奪われる――。このジレンマを解決するために有志たちが採った策は、学校や家族には一切経済的負担をかけず、ぜんそく専門医を学校に派遣することだった。そこで早速、ニューヨーク市教育総長とぜんそく専門医に協力を求め、賛同を得た。プログラムの試験運用校として、ぜんそく児童が特に多く治療ニーズがあると思われる公立校2校も選んだ。

しかし、プログラムに予め確保された予算はなく、資金を出してくれるクライアントもいない。試験運用のための予算は、個人の寄付と現物支給を合わせて3840ドル(約48万円)。当初の目的を果たすには、FH有志と医師、政府・学校関係者、親、そして民間企業・団体の協力が必要不可欠だった。

―企業の社会的責任

2005-2006学年度にかけて実施されたプログラムの試験運用は、目標を上回る成果を収めた。児童の欠席日数は前年度比で55%減少し、入院件数は75%も少なくなった。緊急治療室の利用回数は25%減少し、入院に伴う費用は14万1000万ドル削減された。試験の成功を受け、ERASEは現在、他の学校にも導入されている。

ERASEにパートナーとして参加したポール・エーリッヒ医師は、年間365日体制で児童の治療に奔走した。プログラムの成功は、FHを中心に、こうした多方面の関係者の熱意があって初めて実現したことだ。授賞式に臨みFHのデイブ・セネイ社長兼最高経営責任者(CEO)は、協力者に謝辞を述べるとともに、企業の社会的責任を改めて強調した。

関連URL:

米国PR協会(Public Relations Society of America)URL :
http://www.prsa.org/

フライシュマン・ヒラード(Fleishman-Hillard)

ERASEのウェブサイトURL :
http://www.projecterase.org/

■ ライター : 大村智子(ニューヨーク在住)

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