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【富士通株式会社】広報とIRを担う広報IR室

公開日:2004年10月21日 | 最終更新日:2013年5月21日

メッセージを言葉でストレートに表現する広告に比べて、広報には記者の眼を介してメッセージを伝える難しさがある。広報の担当者は真意を思うように市場に伝えることができず悩むことが多い。

ここ何年間かにわたる世界的なIT不況下で、代表的な日本企業として注目度の高い富士通にはマスコミの眼も厳しく、同社の広報担当者の悩みもひときわ大きかった。現場の記者に一生懸命説明しても、短い記事ではそれが十分に伝わらない、反映されないことも多かったという。
逆風の吹く環境に屈することなく精力的に活動を展開、富士通の広報IR室はこの厳しい時期にあって、苦しみながらも多くを得てきた。
広報とは何か、どのようなスタンスで記者に接していけばよいのか—そんな悩みを抱く現場の広報パーソンを勇気づける貴重なお話を、富士通における広報とIRを統括する八木 隆 広報IR室長にうかがった。

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広報とIRを担う広報IR室

1935年、富士電機製造株式会社(現:富士電機)の電話部所管業務が分離され、富士通信機製造株式会社が設立された。1951年からコンピュータの開発・製造に着手、今ではグループ売上約5兆円、コンピュータと通信、ソリューション、そして半導体までをカバーするIT専門の総合ベンダーへと成長した。これら幅広い分野にわたる製品を自社ですべて揃えているベンダーは、もはや世界でもIBMと富士通以外にはない。

一般に、IR業務は財務部門に属する企業も多いが、富士通では同じ情報ソースを基に統一されたメッセージを発信できるよう、広報とIR双方の業務を担う広報IR室として組織されている。広報IR室では、同社が何を目標としているのか、将来どこで強みを発揮していくかというビジョンを、企業業績に関わる数字とあわせて開示することを目指している。

イントラネットで広報ノウハウや信念を共有

報道関係者の連絡先を記したメディアリストはもちろん、取材記録や過去の掲載記事などは広報部門の財産であるが、担当者個人のパソコンや頭の中に閉じ込められている場合が多いのではないだろうか。富士通の広報IR室には、それを共有して活用、継承できる仕組みがあるという。 「MyWeb」というイントラネット上のサイトで、記者情報や発表手順はもちろん、広報としての基本的な業務ノウハウなど広報IR室員として知るべき情報がデータベース化されたものだ。

「1年半くらい前からスタートして、まだ発展途上ではありますが、記者が何に興味を持っているか、以前どのような記事を書いたかなど確認でき、記者への的確な情報提供にも役立ちます。また、それぞれの活動を通して得た情報や感じたことなどを情報として全員が記録できるようになっています。
これを活用して、若いスタッフも含めて、どうしたら付加価値の高い広報活動ができるか、積極的に改善提案してくれることを期待しています。」(八木さん)

このMyWebには、「室長からのお知らせ」というコーナーもあり、日々のさまざまな投稿を通じて、八木さんがメンバーに意識して欲しい広報の基本姿勢が伝えられる。

「モットーは”視野を広く、目線を低く、アンテナを高く”です。広報に限ったことではありませんが、自社を深く知り、社会がどうなっているか、何が起きているのかを知らないと社外の人々と話はできませんし、どれだけ相手の立場でものを見られるかが重要です。
そして、どんな情報でも関心、好奇心をもって仕事をしたいですね。富士通は”お客様起点”をモットーにしていますが、富士通はどんなものを持っているかという”現物”、実際に何が起きて何が求められているかという”現実”、そして”現場”での一体感、この3つの”現”をおさえていないと話ができません。」(八木さん)

富士通の発表案件は、多い時には半年で200件にも上る。常に広報担当者にとってお客様である記者の立場に立って、どういうリリースであったらよいかを考えているという。

「プレスリリースは、”誰のために”、”何のために”、”何を狙って”の3つを明確に示すこと。
見出しとリードで記事を書いて貰えるくらいになりたいですね。 言うは易し…ですが、みんな常に努力してくれています。とにかく発表案件が多いですから、発表内容に応じて社長や専務に積極的に会見していただく、または、ビジネス・グループ長の出席のもとに説明会を実施する等、メリハリをつけてアピールする工夫をしています。」(八木さん)

報道発表に際してはその準備で手いっぱいになりがちだが、「新聞に出る前に社内に流す」が八木さんの方針でもあり、それは広報の責任だという。

「会社のことを社外から知らされるのは最低です。メンバーが作成した資料をベースに発表のポイントや意味などについてサマリーを作成し、私がチェックします。プレスリリースの前に、それを主たる部長以上全員にメールで配信しています。
件数が多いためすべてのサマリーのチェックはハードな作業ですが、営業部門でお客様へのセールストークにも使ってもらえますし、けっこう役に立っているとも聞きます。」

毎朝新聞を見ることは、毎朝鏡を見るのと同じ。マスコミは企業を映す鏡

「鏡を見ないと自分の顔や姿が見えないのと同じように、自分の真実は、多分、自分ではわからないんですよね。自分でこう思う…ということよりも、外からどう見えているかが重要なんです。もし、記事に書かれていることが間違っていたら、こちらから見せる手法が間違っているか、努力が足りない証拠。だから、もし、悪い記事を見つけても、自分の会社の真実の姿が映っていると受け止めて、どう直せばよいかを工夫しよう、本当の姿を正しく発信しようと…それが、広報の役割である”付加価値”を付けるということだと思います。」(八木さん)

自社を映す鏡だからこそ、丁寧に真摯に対応しようと心がけ、こういう精神で接していればきっと気持ちが通じると信じたい。
けれど、実際にはなかなか気持ちの整理がつかない結果に悩むことも多い。

「こちらが”こういう風に書いてもらいたい”、”こう書いてもらわないと困る”と思っても、マスコミ側ではそれが記事としてニュース価値がないと判断する場合もあるんですよね。マスコミと企業(広報)の関係は、例えば、決して交わることのない鉄道のレールのようなもので、最終的には論理は異なります。
でも、交わることのないレールの上の車輛に一緒に乗ることはできます。同じ乗客として、同じ方向に向け一緒に走ることができます。そういう関係であり続けたいですね。
相手をお互いに理解し、尊重した上で、『五分と五分』で真正面から接する、心から付き合えるような関係でありたいと思っています。」 (八木さん)

マスコミとどういうスタンスで付き合えばよいか、結果をどう受け止めたらよいか、レールとその上を走る車輌の例え話。これは、広報とIRだけでなく、長年、外部との折衝が多い部門に務められた八木さんの持論である。

思慮深い比喩を語る八木さんのリードのもと、同社に脈打つ広報スピリットは無形の財産として若いメンバーに脈々と受け継がれ、MyWebといった有効なツールを活用しつつ、広報IR室のチーム力はさらにパワフルになっていくことだろう。

八木 隆 氏プロフィール

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富士通株式会社 広報IR室長

1975年 早稲田大学政治経済学部を卒業後、富士通入社。
商務部担当部長、政策推進本部企画推進部長、政策推進本部計画部長(兼)電子行政政策推進室長を歴任し、主として関係官庁/業界団体/経済団体などの渉外・折衝業務を担当。
2001年広報室長に就任し、2002年改組により広報IR室長、現在に至る。
1952年、石川県生まれ。

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