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【武蔵野美術大学】学生参加型の大学ブログから伝える“リアルな美大の日常”

公開日:2009年2月26日

学校法人武蔵野美術大学は、東京都小平市にメインキャンパスを構え、ファインアート・デザイン含めて11学科からなる私立の美術大学です。1929年に「帝国美術学校」として創立し、2009年10月に80周年を迎えます。

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武蔵野美術大学公式ウェブサイト

今回は、武蔵野美術大学(通称ムサビ)の学生が綴るブログ “ムサビ日記” の管理人としても注目の、手羽イチロウさんを訪ねてお話を伺ってきました。手羽氏は同校の企画広報課を経て、現在は法人企画室で来年訪れる開校80周年記念のプロジェクト運営も勤めるなか、“ムサビ日記”の運営をされています。そんな手羽氏に、同校の魅力について聞いてみました。

「いろんな価値観の人が揃っているのが面白いと思います。それぞれ表現方法は違えど、同じ方向を向いている人が集まっている。卒業生の活動からも分かるんですが、学生時代に専攻していた分野と違う世界で活躍している方が多いのが、ムサビの傾向でもあります。要因の1つに、色んなものに興味を持ったほうが面白いものが造れる、『教養を有する美術家養成』という建学精神が流れていることがあると思います。また、元々考える事が好きな人、思考力の高い学生が入学する傾向があります。」と分析します。今回訪ねてみて、絵画・彫刻・グラフィックデザイン・工芸・映像・建築と様々な分野が1つの場所に混じりあうことで、自然と互いが影響できる環境だと感じました。「そういった物理的なこともあると思います」と手羽氏も話します。

- 非公式の広報ブログ「ムサビ日記」、設立のウラに -

学生と職員が綴るブログ“ムサビ日記”は2003年からスタートしたサイト”ムサビコム”のメインコンテンツで、学生と職員の姿を日記風にインターネットで公開しています。当時は「ブログ」という言葉が今のように一般的ではない時代。そんななかで、運営をスタートしたきっかけはなんだったのでしょうか。

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“ムサビコム”

「新入生向けアンケートの“受験生の時に知りたかった大学の情報ってなに?”という質問に対して、“入学後をイメージできる学生の生の声”という要望が非常に多かったことがきっかけになっています。確かに、オープンキャンパスや進学説明会で、受験生が在学生とコミュニケーションを取れる機会はありますが、それ以外ではなかなか受験生が一番知りたい“学生の生の声”を届けることはできません。美術大学ということで、学生の作品を展示する機会もありますが、これも完成した状態を公開するに留まります。謎な存在である美大生は何に悩んでいるのか、何を嬉しく感じているのか、そのリアルな感情を伝えることに大きな意味があると思いました。そのためにはどうすればいいのか。これは、学生が日常を日記風にして公開すれば伝えられるのでは!とブログを開設することにしたんです。また、本学にはOBにリリー・フランキーさんやみうらじゅんさんがいることでわかるように、いろんなことに興味を持ち、それを文章で表現できる学生が多いので、そこの良さも出していきたかったです。」(手羽氏)

個人でドメイン、レンタルサーバ、ブログシステムを用意し、学生の声を直接発信する。広報的な視点からするとリスクも考えられるこのアイデア。その点について周囲からの反対の声はなかったのでしょうか。

「職員が逐一チェックをかけるより、学生が書いたものをそのまま載せたい。そうでなければ意味が薄れてしまう。でも大学公式ではそれが難しいこともわかっている。じゃあどうすればいいんだ、と悩んだ結果、私が個人的に運営する形をひらめいたんです。形ではなく実を取ったというか、公式でやろうとするから懸念点があがってくるわけで(笑)」(手羽氏)

そういったユニークな展開で“ムサビ日記”はスタートします。ブログに参加する学生数も、5年間で4名から40名へと大幅に増加し、学内外でも認知度が高まっています。大学ブログの先駆けとして成長した現在も、“ムサビ日記”は大学公式ブログではありません。手羽氏が「公式なアングラサイト」と表現することからも分かるように、同校の自由を重んじるバックボーンが良い影響を与えていると感じます。それについて手羽氏も「微妙なさじ加減で自由にやらせてくれる環境がムサビには昔からある」と話します。実際、読者からの反応はどうなんでしょうか。

「受験生向けブログとして立ち上げたのですが、OBや在学生、学生の親御さんからの反応が大きくびっくりしています。娘が学校で何を制作しているのか、今の美大生がどんな授業を受け、どんな生活を送っているのか。みんなの先輩にはどんな人がいるのか。長い目で見ると、これも一種の広報活動ではないかと感じています。また、広報課を始めとした職員も、学生がどんな課題に取り組んでいるのか、分かっているつもりで実は把握しづらい美大生活をウォッチできる、そういったツールにもなっています」(手羽氏)

- ブログ運営は3パターンに分かれる -

現在、約40名の学生がライターとなって更新を続けている“ムサビ日記”ですが、手羽氏自身もブログを毎日更新(日曜除く)しています。ご自身のブログ執筆についても伺ってみました。

「ブログが非公式ということで、執筆は業務中にはしない、というルールを持って書いています。ですから、出勤前の時間を使うことが多いですね。色々書きたいことがあるので、30分~2時間かけています。」ブログを書き始めてから起床時間は3時~4時だといいます。その熱意に脱帽です。そんな手羽氏は、“ムサビ日記”の注目により、大学ブログをテーマにした大学広報担当者のセミナーに講師として登壇されました。今回、手羽氏に5年間の経験から、ブログ運営を成功させるコツを伺ってみたので、紹介します。

「周りの大学広報担当者に聞いてみると、既にブログを運営しているか模索段階という学校が多いようです。一般的に考えて“ムサビ日記”のような学生参加型のスタイルは、なかなか敷居が高いと思いますので、教職員がライターとなって運営するスタイルを想定します。実際に運営している学校を例に、運営スタイルをタイプ別で紹介してみると、

(1)  バロムワンタイプ  2人(複数人)で1つのブログを書くタイプ
(2)  ゴレンジャータイプ  複数人でそれぞれブログを書くタイプ
(3)  ウルトラマンタイプ  1人で書くタイプ

この3パターンがあげられます。運営面から現実的に考えると、(1)のバロムワンタイプがベストだと思います。業務を分担できるなど、書き手がフォローし合えたほうが継続性が増すからです。ですが実際、他校のブログはどうかというと、(3)のウルトラマンタイプが多いです。これは熱意のある人が単独で書いているケースです。

私自身も書いていて思いますが、それなりの覚悟と自発的なエネルギーがなければ、面白いブログにはなりません。更新も少なく面白くないと読んでくれない。読者が少ないとモチベーションもあがらない。なので「ブログが流行っているからブログをやれ」と上司命令でブログを始めても続かないと思います。例えば、オープンキャンパスの紹介をブログでするとします。ここで「オープンキャンパスを開催します。皆さん来てくださいね」と単純な告知をブログにアップしても、読み手には響かないと思うんです。難しい意味ではなく、書き手独自の視点が入らないと読者がつかないかなと、これは私自身の経験からそう思います。担当者の思いが伝わるブログ、求められているのはそこだと思います。」(手羽氏)

- 他校とタッグを組んだイベントで「美術離れ」を食い止める -

ここまでは同校のインターネットを使った情報発信を紹介しましたが、手羽氏は他にもユニークな取り組みをされています。その背景にはどんなことが関連しているんでしょうか。

「一番は高校生の“美術離れ”です。小・中・高校と学校での美術の授業時間がどんどん減っており、美術やデザインの本当の面白さに気がつくことが難しくなっています。それへの危機感から、もう一度美術に関心を持ってもらえるよう自分達が声を上げていかないと、とアクションを起すことにしました。」

同校に関心を集めることより、まず美術や美術大学に関心を持ってもらうことが大前提だと手羽氏は話します。それが分かるのが、他校を巻き込んだイベントの実施です。ムサビ以外の私立美術大学として、アカデミー賞短編アニメーション部門受賞の加藤久仁生監督など著名人を輩出している多摩美術大学(通称タマビ)が有名ですが、元々は武蔵野美術大学と多摩美術大学は、同じ「帝国美術学校」を母体としています。そういった経緯を持つ両校について手羽氏は「タマビさんとはライバルの関係だけど、リスペクトしあう関係でもある」と話します。

そんな中、手羽氏のアイデアに賛同した多摩美術大学の広報担当者と一緒に、2008年6月に武蔵野美術大学のオープンキャンパスで、「タマビとムサビから美大を知る -ムサビから見たタマビ タマビから見たムサビ-」を開催。訪れた受験生に両校の魅力や、美術・デザインの魅力をアピールする試みをしています。

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オープンキャンパスには大勢の学生が

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パネルディスカッションの様子

キャンパス探訪(1)「美術離れ防げ」ライバル連携 (2008年8月12日 読売新聞)

「“美術=付加価値”ではなく、アートやデザインは社会を幸せにすることが出来る。という本質的な部分に、いま一度目を向けてもらいたいな、と思います。社会をよくしたい、と考えている人は、意外と美大に向いている人だと思うんですよね。選択肢の一つに、美術やデザインを生業とすることを持ってもらえれば、嬉しいです。」(手羽氏)

インターネットで、イベントで、と情報発信に取り組む手羽さんに、今後やってみたいことを聞いてみました。

「いつかブログで”美大日記”をやりたいと考えています。ムサビだけで盛り上がっていても仕方なく、他の美大生も交えたブログを運営してみたいです。色々乗り越えなければならない問題は多いでしょうが、絶対面白いと思うんですよね。そして、他大学を引っ張り込んだ企画を立てられるのはムサビだけでは、という自負もあります」(手羽氏)

ブログ運営を通じ、他の大学関係者とも交流が生まれるなど、業界活性化につながる様子を見せる大学ブログ。今回のインタビューでは、本文で紹介しきれないほど、熱い思いを話していただきました。卒業生が母校の職員として従事することに対して、難色を示されることもあると聞きましたが、学生からの目線を知っていることや、学校への愛着があってアクションを起こせることも多い仕事だと感じました。手羽さんの型破りな企画に、今後も注目していきたいと思います。

追記
手羽さんのブログにてご紹介いただきました。ありがとうございます。

ほんとは合格発表のこと、アパートのことを書いた方がこの時期はアクセスも伸びるし(笑)、入試業務終了日のことも書きたいんだけど、今日はこの話題をさせてもらいます。

ムサビ日記 -室長の手羽-: 広報室訪問

■大学広報関連

ご担当者様プロフィール

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手羽 イチロウ氏(テバ イチロウ)
武蔵野美術大学 企画部 法人企画室 室長
 

1993年3月 武蔵野美術大学 造形学部 彫刻学科 卒業
1993年4月 武蔵野美術大学 教務部 教務課に勤務
1999年6月 同 企画部 情報システム課
2002年6月 同 企画部 企画広報課
2003年6月 “ムサビコム”スタート
2008年6月 同 企画部 法人企画室長  現在に至る



ムサビ日記は書籍にもなっています。興味のある方は、是非手に取ってみてください。

photo

ムサビ日記 -リアルな美大の日常を-
手羽イチロウ
武蔵野美術大学出版局 2007-07

by G-Tools , 2009/02/24

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