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【ワタミ株式会社】企業の付加価値こそが、最大のPR要素

公開日:2007年5月10日

1984年に創業したワタミ株式会社。居酒屋とファミリーレストランの中間にマーケットがあることに着目し、20年前に外食産業界に、第二の家庭の食卓「居食屋(いしょくや)」という概念をうみ出す。現在は、居食屋 「和民」< http://www.watami.co.jp/watami/index.html >をはじめとする飲食店を、全国に636店舗(2007/4月現在)展開する外食産業のトップブランドに成長を遂げている。
「地球上で一番たくさんのありがとうを集めるグループになりたい」というスローガンは、同社の事業展開で具現化されている。外食事業からスタートした事業領域は、近年では介護事業や農業事業、教育事業、にまで及ぶ。そしてそれら事業を立ち上げる原動力は、ステークホルダーのニーズに応えたいという一貫した理念である。
今回は、同社の幅広い事業展開と、その企業理念をステークホルダーに伝えるため、どのようなコミュニケーションを図っているのか、同社の広報を牽引する 社長室室長 中川直洋氏にお話をうかがった。

ワタミ株式会社
社名:ワタミ株式会社
設立:昭和59年4月
代表者:代表取締役社長 渡邉美樹
資本金:4,334,558千円(平成18年3月31日現在)
従業員数:2,827名(グループ計)(平成18年4月1日現在)
事業内容
1. 外食事業
2.介護事業
3. 農業事業
4. 環境事業
5.教育事業
6.中食事業
URL:http://www.watami.co.jp/


ステークホルダーから「たくさんのありがとうを集めたい」

「弊社は外食事業からスタートした会社ですが、現在は大きく分けて6つの事業を展開しています。その全てにおいて言えることは「お客様のありがとうを集めたい」という企業メッセージが根底にあることです。売上から見たマーケットへの訴求という発想ではなく、マーケットのニーズに対して「ありがとうを集めたい」というコンセプトが第一にあること。これが弊社の特徴です。それは、CSRや戦略など作られた言葉に当てはめて考えるのではなく、上場企業は公共性のある事業をしなくてはならない。こういった考えを常に持っています。

我々は外食事業とは、お客様に食事だけでなく、空間そのものを提供することだとしています。そしてそのことを、そっくり「介護事業」にも当てはめて考えており、我々は介護事業を外食事業と同じサービス業の領域として捉えています。


中食事業で展開する「わたみキッチン」 写真は一号店の?わたみキッチン’三越武蔵村山店


それは、6本目の事業としてスタートした「中食事業でも同じことが言えます。お子様からご高齢者のお客様まで、安心して召し上がれる安全な惣菜を届けたいという思いでテイクアウトのお惣菜チェーンをスタートしました。「中食」は主婦やOLなど忙しく働く女性にもニーズの高いマーケットですから、今後弊社の事業においても大きな柱になっていくと予想しています。」(中川氏)


農業事業の立ち上げによって、徹底した商品管理が実現

「店舗のお客様をはじめ、弊社が運営する介護施設に入居されている方々に、体に良く美味しい食事を召し上がっていただくために何が必要か。そして我々にできることは何か。自らの手で一貫したサービスを提供することを具現化していくと、安全な「食材」の確保というテーマにたどりつきました。その結果として、農業事業の立ち上げが実現したのです。それが5年前の2002年のことです。

有機野菜を生産するワタミファームの農場 写真は倉渕農場

有機野菜使用のわたみキッチンサラダ

現在国内で流通している野菜は、安全安心とうたわれているものの、何らかの方法で農薬や化学肥料を使用しているケースが多く見受けられます。我々のポリシーでは、そういった食材を平気でお客様に召し上がっていただくことに強い抵抗があります。すべての野菜が有機野菜というわけにはいきませんが、とことんやるなら、自分達で事業を立ち上げよう、自分達で安定した有機野菜を供給したいという思いでした。そうすれば、川上から川下まで、徹底した商品管理が可能になります。

農業をスタートさせるにあたって方々で調査を行いましたが、そこで感じたことは、日本の農業が本気で有機野菜を市場に流通させるには、今のままでは駄目だろうということでした。弊社が農業をスタートさせた切欠は、自社サービスの付加価値を高めたい、という一面はもちろんのこと、「日本の農業を改革しなければならない」という使命感を持ち、事業を始めています。
この事業には、我々のポリシーに共鳴された方々が契約農家として参加くださったケースもあります。こういった事業展開は、生産性や利益率を追うだけでは実行は難しいでしょう。しかし公共性のある事業に正面から取り組むことで、その企業の存在価値が生まれるのではないでしょうか。」(中川氏)


― 5年間で同社が運営する農場は、北海道・千葉・群馬・京都の4箇所8農場牧場に拡大され、面積は延べ500ヘクタールになる。この規模は、農業生産法人として国内最大という。作付けから全てを自社で行うなか、有機野菜だけでなく、牛・豚・鶏といった畜産。有機牛乳・有機チーズなどの酪農も手がける。また、畜産は通年放牧型で、飼料も自然のものを使用し、ベストな環境をつくっている。お肉の高カロリー高コレステロールが気になる、といった話もここではあまり意味を持たないかも知れない。
企業の社会的価値を追求する同社へは、外部からの注目も高い。その一つであるマスコミとのリレーションについて話をうかがった。―


企業の付加価値こそが、最大のPR要素

「弊社の経営規模は、知名度に対してそれほど大きな会社ではありません。でもなぜ、我々の取り組みに注目が集り、社会への影響力があるのかと考えた時に、まず弊社のステークホルダーに対する思いが熱いということ、ファンでいてくださるお客様の弊社への期待度が高いことが要因ではないかと考えます。

実は弊社は、特別メディアに向けて積極的なアプローチをしているわけではないんです。しかし、月間50~70くらいのメディア露出がある。これは弊社のポリシーや取り組みについて、メディアが応援してくださっていることにあると思います。また我々もその声に応えたいため、メディアが取り上げたいと思っているような話題を提供する。これはいい話も悪い話も含めてですが。こういった普段のリレーションが、結果的にメディア露出の機会を増やすことになっているのではないでしょうか。

弊社の広報は、メディア担当が2名、社内報担当が1名、ボランティア担当が1名。そこに私を含め計5名で運営しています。メディアリレーションについては、新聞社がメインですね。新聞の掲載記事を読んで、興味を持たれたテレビ局などの他媒体から別途取材を受けることもあります。
記者の方々には、紙の上だけでは伝わりにくい企業理念をご理解いただくために、できるだけ現場を見ていただくようにしています。人事異動で新しく着任された記者には、そのたびに現場へお連れします。現場というのは、店舗であったり介護施設であったり、場合によっては農場であったり。実際に足を運んでいただくことで、口や紙では伝えきれないことをご理解いただいています。「ワタミが言っていることはこういうことか!」と。我々の事業に対する熱意は、利益を追うことだけでない付加価値になっていると思います。そしてその部分をステークホルダーに理解していただくことが、広報の重要なミッションだと考えています。」(中川氏)


― 紙・オンラインの媒体露出だけでなく、テレビ番組とのタイアップ企画など、新しいプロモーションにも挑戦する同社。最近積極的に取り組まれている、メディアとのタイアップ企画を通じて感じたことをうかがった。―


「弊社の番組への露出は、報道番組やドキュメントがほとんどで、代表の渡邉がクローズアップされる機会が多いですね。それに加えて、最近ではバラエティ番組のような視聴者の方が親近感を持ちやすい番組にも出演しています。

今年は「和民」の15周年記念の年なんですが、期間限定メニューの開発にあたり、テレビ番組とタイアップ企画を試みました。3名の出演タレントに考案していただいたレシピを、番組内で渡邉が選考するというもので、レシピの決定から店舗での商品化まで、わずか10日間という非常にタイトなスケジュールでの実施でした。収録当日でないとメニューが決定しませんので、裏ではどのレシピに決定しても良いように、各パターンの商品化をシュミレーションしました。大変ではありましたが、結果としてよい企画だったのではないかと思います。

率直に申し上げて、バラエティ番組に渡邉が出演することは、弊社にとっては冒険でした。いままでは外食業界というと、店舗でのプロモーションがメインでしたし、従来企業とテレビの関係は協賛しかありませんでしたから。しかし、今ではタイアップという切り口ができはじめた。企業がスポンサーとして番組に関わるだけでなく、これからはメディアと共に番組をつくる時代になっていくのではないでしょうか。我々としても、そういったタイアップ企画を増やしていきたいですし、制作現場のワクワクドキドキ感を、テレビ局と視聴者(お客様)で楽しみたいと思っています。」(中川氏)


高まる企業活動への関心。近づくステークホルダーとの距離

「広報に携わって感じていることは、メディアや消費者側が今まで以上に、企業の経営に対する興味を持ちはじめているということです。「TOBやM&Aとは。企業の経営戦略とはなんだろう。」と一般の方にとっても、企業が身近な存在になっていると感じます。

ですから広報活動と同じく、IR活動でもその流れを意識して行っています。アナリストを超えて、より投資家に近い距離にいるファンドマネージャーのご意見を聞き、その奥におられる購入者とのコミュニケーションを考えています。できるだけステークホルダーと近い目線で意見交換ができればと思いますし、ステークホルダーと企業の間に仲介点が増えるほど、思いが薄まってしまうのではないでしょうか。
そもそも弊社には、物事の根源に向けたパフォーマンスをしたいという思いがあります。先ほど申し上げた農業についても同じ事が言えますが、川上から川下まで、全部をやることによって会社は面白くなるのではないでしょうか。」(中川氏)


― 企業はステークホルダーとの距離感をいかに近くしていくか。企業にとって大きなテーマである。ステークホルダーとの距離が近づくことで、企業は何を強化しなければならないのだろう。最後に今後の課題についてお話をうかがった。―


「そうですね。リスクマネージメントでしょうか。事業が拡大したり、メディアへの露出が増えるなかで、ステークホルダーからポジティブ・ネガティブ併せて、ご意見をいただく機会が多くなっています。そのなかで、やはりステークホルダーに対するサポートをもっと強化する必要があると感じています。
弊社では、店舗でアンケートを実施しお客様からのご意見を頂戴しています。集められたアンケートの数は1週間で約1000通あり、その中でコーポレートに関するご意見は1割程度ですが、それでも1週間に50~100通を頂いています。


国内外に636店舗(2007年4月現在)展開するワタミグループの外食店舗 写真は?居食屋「和民」’


またブログや掲示板など、インターネット上に掲載されるネガティブ情報に対する対策も課題になります。しかし単にネガティブ情報を収集し、そこの火を消すような対策が良い結果になるとは考えていません。ネガティブに見られる部分があるのであれば、その根本を改善することが本来あるべき対策だと考えています。外からいただいたご意見を社内で共有し、改善策を見つけ出すように促すこと。実はこれが大変なエネルギーを必要とするんですが、これも広報の重要な任務でしょう。」(中川氏)


― 集められた意見を放置することなく社内と共有し、改善をもってステークホルダーにフィードバックする。このような地道な取り組みが、同社が広く支持される秘密なのかもしれない。今後も同社事業と広報活動に注目していきたい。―

 


ご担当者様プロフィール

中川 直洋

中川 直洋(なかがわ・なおひろ)氏
ワタミ株式会社 社長室 室長
 

1964年生まれ。1986年勧角証券(現みずほインベスター証券)に入社。各支店の営業部で、個人・法人証券業務に従事、株主利益だけを評価する株式市場に疑問を抱き、社会的責任を果たす企業を評価するべきと主張。02年12月よりワタミに入社し、IR・PRの責任者として従事。他に行政機関や日本経団連の窓口、社会貢献活動も担当し、全てのステークホルダーの窓口を担当している。社内報「体の重い亀」、株主様コミュニケーションツール「株主ふれあい通信」編集長。

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