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神谷町ではたらく広報マンの独白(22)”オフレコ”について考える

公開日:2009年3月19日

“オフレコ”について考える

物議を醸した”オフレコ”発言

漆間官房副長官(元警察庁長官)の”オフレコ”懇談における発言が物議を醸している。麻生総理は、記事に関して当初、”誤って報道された”とコメントしたそうだが、”オフレコ”という言葉の意味をあまり考慮していないようにも思えた。
今回の件は、広報の立場からどのような問題と見ることができるのだろうか。広報の世界でもよく使われる”オフレコ”について考えてみたい。

“オフレコ”の意味

“オフレコ”という言葉を使うのは、ある事項を説明し、より正確な理解を促すため、書かれないことを前提に非公表の背景等を伝える時に使われる。
“オフレコ”という言葉は、いうまでもまく”off the record”、すなわち”記録にとどめない”という意味である。記録がないと正確な記事を書くことができない、だからオフレコというのは、話を聞いても記事にはしないという、取材をする側とされる側の了解をさしている。両者の間で結ばれる報道協定の一種といってもよいだろう。
一般的な話になってしまうが、企業が報道を対象に会社としての公式なコメントを行う場として、記者会見や記者発表会がある。広報担当者の立会いのもとに設定される取材やブリーフィングも同等であり、こういった場で企業のトップ等が行う発言は、どの部分でも記事化されることを前提としている。記者会見や記者発表会のように、多くの報道関係者が集まる場では、まず”オフレコ”はありえない。それに対して、トップや役員が報道関係者との交流や懇親を主な目的として実施されるのが”懇談会”や”懇親会”であり、あえて”オフレコ”とは言わなくてもその場でなされた発言はストレートな記事にはしないというのが、暗黙の了解なのだ。

“オフレコ”は絶対ではない

漆間副長官の件は、民主党の小沢代表も関与しているといわれる西松建設違法献金事件との兼ね合いで、20数名の記者を集めた”オフレコ懇談”の場における発言が記事にされたことに端を発している。今回の”オフレコ懇談”とは、どのような集まりだったのかは知らないし、”オフレコの場”という前置きがあっての会だったのかもわからない。ただ、飲食を交えたような懇談会だったのであれば、発言をする側に、何を話しても記事にはならないという安心感があったように思われる。何を話しても記事にならないのであれば、リップサービスもあり、ふだんは言及できないような内容や表現が行われがちである。
激しい政争を背景として、要人の発言に、報道に値する重要性が認められるのであれば、絶対に記事にはならないという保証はどこにもない。まずは発言した側に対してオフレコ解除の要請をするのが筋なのだろうが、新聞記者の世界は、特ダネ(スクープ)を争う熾烈な報道合戦の世界でもある。まして20人も出席者がいれば、他社に出し抜かれることへの危機感を抱く記者もいるだろう。そんな記者が、要人の氏名を伏せたとしても、”政府高官”の発言として記事にすることは、不思議なことではない。
今回、どこまで”オフレコ”ということが確認されていたのかはわからないのだが、”オフレコ”が報道協定の一種と解釈すると、その協定を自ら破ったのが報道側だとすれば、そのこと自体が大きな問題なのである。ただいずれのメディアも、今回はそういう観点からこの問題を取り上げてはいないようだ。

“オフレコ”をどう使っていくか

だから多数の報道関係者を前にしては、”オフレコ”は基本的に通用しないと考えていたほうがよい。このことは、企業の広報活動でも同じである。
多数の報道関係者を前にした場で”オフレコ”を用いるのであれば、予想外な記事になることも想定した上で発言する覚悟が必要だろう。あるいは、オピニオンを誘導するため、時期や表現を曖昧にした記事として掲載を促すという企みがあるのならば、それなりの高度な計算が必要だ。
企業がマスコミ懇談会のような場を持つ際、広報担当者は、設定の背景やタイミング、報道関係者の顔ぶれや人数、さらに、できるならば出席記者の性格や信頼関係など様々な要素を考慮し、必要に応じて会社側の出席者に以前にアドバイスしておくことも必要だろう。広報はそれだけの配慮が求められる奥の深い仕事なのだ。
それに対して、ワン・オン・ワン(1対1)の取材は、取材する側と取材される側の信頼関係が前提である。オフレコという条件でスクープに値するような事項をたとえ聞いたとしても、もし約束を破れば記者と会社の間の信頼関係は崩れる。記者はその会社に2度と出入りできなくなるだろう。だから個別の取材においては、オフレコの約束は、比較的に守られやすい。
ただし、油断は禁物。事業の成否を左右したり、大きな影響のあるトップ人事等、決して漏れてはならない重要事項は、”オフレコ”であっても絶対に話をしないほうがいいと思う。
ところで、漆間副長官のオフレコ懇談における発言は、気を許した失言だったのか、あるいは民主党との政争を有利に展開するために高度に計算された発言だったのか?
広報の世界は長くても政治には疎い私は、その真偽を図りかねている。

神谷町の広報マン 愛称:マーベリック
外資系IT企業で広報マン17年、PR系企業におけるコンサルタント生活3年を経て、現在は神谷町にある金融会社にて広報を担当。広報マンとして20年余を過ごす。広報の仕事と、赤ワイン、クルマ、そして年に数回に過ごす軽井沢での静かな生活をこよなく愛する。独自の視点から広報を語り、広報の仕事に携わる後進の成長に貢献したいと考えている。


■神谷町ではたらく広報マンの独白

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