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神谷町ではたらく広報マンの独白(20)社会部の記者とどう付き合うか

公開日:2009年1月6日

企業で広報を担当していると、いろいろなメディアからコンタクトがある。普段からコミュニケーションがあり慣れ親しんだ記者ばかりならよいが 、時には馴染みのない一般新聞の社会部からも突然電話がかかってくることもある。その時ばかりは、思わずドキリとして身構えてしまうものだ。

社会部記者の関心は?

なぜならば、一般紙の社会部記者が追うのは、企業の不祥事や事故などの、ネガティブ情報のケースが多いからだ。
会社によって多少は異なるだろうが、IT系の企業での勤務経験が長かった私の場合は、新聞社の経済部や産業部とのおつきあいが多かった。会社が社会貢献活動を行ったわずかなPRのケースを除いて、まず社会部とお付き合いした経験はない。
先日、日本パブリックリレーションズ協会が行ったセミナーで、ある一般紙社会部出身の編集委員から話を聞く機会があった。まとまりのある話ではなかったのだが、日航ジャンボ機の墜落や幼児殺害事件等の世に知られる大事件の裏話、また通常の取材では得ることのできない情報を獲得するための苦労といった社会部記者ならではの話は、なかなか迫真的であり興味深かった。

社会部と経済部の役割

いうまでもないことだが、新聞社の中で社会部と経済部の仕事は大きく異なる。そして、それぞれの記者の気質には、相当異質な部分があるようにも思える。部門と紙面を関連づけるのであれば、経済部は企業やビジネスパーソン向け、社会部はお茶の間向けの編集を行うということを意識したほうがよいだろう。
経済部がカバーするのは、経済や産業の動向、その中における企業の業績や人事等が中心である。記者はマクロ的に経済、産業や業界をとらえながら、ミクロ的に企業や経営者の動向をウォッチし、その将来を見つめている。経済部の記者にとっては、大企業のトップ人事や有力企業同士の提携は、重要な関心事である。ダイナミックに変化する経済や産業、企業の様相を主に報道するのが経済部の役割だ。
一方、社会部は、基本的に経済の数値や企業動向などには興味がない。扱う内容は、企業関係では不祥事、事件や事故、善行や社会貢献等の美談といったところだろう。
むしろ企業に限らず、社会で起きている、一言ではいい尽くせない様々な出来事を取り上げる。不景気についてとり上げるとしても、その切り口はリストラされた派遣労働者の雇用や生活にかかわる内容等が多い。取材に対する記者の意識の根底にあるのは、不正や悪事を憎む社会正義であったり、胸を打つ人情物語であったり、あるいは時代や世相に対する感慨であったり、様々なのだ。
すなわち、社会部と経済部では、情報を求める記者のねらいや行動原理がまったく異なっているのだ。新聞社というのは「会社」だから、人事異動は当然、行われている。ただ、社会部と経済部の間での記者の異動というのは、不思議と聞かない。
先にも書いたが、もしかすると、新聞社というのは、まだ若いうちに記者の気質や適正を見抜いて、その記者の向いている部門に配属しているのではないかとも思ってしまう。
実は、先日の講演でお話を聞いたのは東京新聞のベテラン編集委員。そばへよると何だかぴりぴりしてくるような、独特の迫力を漂わせていた。
きっとサービス精神でした話なのだろうが、社会部が担当するページにも、新商品やサービス、イベント、お気に入りスポット等を紹介するものがあるので、面白い情報があったらぜひ持ち込んでほしいと述べ、、担当窓口の連絡先を教えてくれた。
ただ、紙面を見ると、その情報欄の対象は、一般消費者向けの内容である。生産財のような企業向けの製品が扱われることはまずないようだ。
企業の広報の立場からすると、日常的な広報の対象機関として社会部を位置づけることはやはり難しいように思える。社会部相手に広報活動をするには、その企業が行った社会貢献、善行、地域との関わり等の切り口で、おまけにそれらの活動に関わった”ひと”を前面に出すことも考えねばならない。
ただ、企業における”ひと”の紹介は、個人のプライバシーの問題もあり、なかなか取り組みにくい分野かもしれない。別に、社会部の記者を毛嫌いする必要はないと思うが、経済部の記者と同様のスタンスでは、お付き合いしてもらうことは難しいだろう。

社会部への広報のスタンス

広報の立場からすると、同じ大新聞社の名刺を持っていても、この相違を見抜いて対応することはとても重要だ。一般的に、企業の広報担当者は、経営戦略や企業動向、業績、新製品や新サービスの発表等を担当するケースが多いが、これらは経済部や産業部、上場企業であれば証券部を対象とするのが普通である。決して社会部へ持ち込むべき内容ではない。
ただ、不祥事等の問題が発生した場合、いやおうなしに取材に応じざるを得ないこともあるだろう。広報におけるクライシス・マネジメントが求められるケースである。広報マンとしては、腹をくくってことにあたらざるを得ない時だ。
先ほどの編集委員は、講演の中でこうも述べていた。
「何か問題が起きた時に、企業はガードを固めて取材対応することあるだろう。その時に重大な事実を隠していて、もしそれが明るみに出た場合は、かえって記事が大きくなってしまうだろう。また、このような場合は、メディアを選んで対応するべきではない」
不祥事や事故の際には、できるだけ、正直に、ものごとを隠さずに情報を公表すべきといわれるが、やはりその通りなのだろう。
セミナーの最後に、私は社会部経験の長い、話をしてくれた編集委員に手をあげて質問してみた。
「神谷町の会社ではたらく広報マンなのですが、社会部の記者にとって、最も重要なことは何でしょうか?」
社会正義とか、人間愛に対する感動とか、模範的な解答を期待していたが、意外なことが語られた。
「そうだね。自分の場合は、負けず嫌いであることかな・・・」
一つのテーマを粘り強く追い求め、他社に負けないスクープを狙うことなのだと、私は理解している。

社会部記者とどう付き合うか

その編集委員は、取材対象とはとことん付き合った上で話を聞くといっていた。自腹を切ってお酒を飲みながら、人間的な交流を通じて話を聞くことも多いとのことだ。
世相の裏側については、誰しも話したくないことも多い。それにもかかわらず話を聞きだすには、通常の取材では困難なのだろう。情報の発信者としての企業広報と、取材を担当する新聞記者というビジネスライクな付き合いではなく、人間同士をぶつけあうような付き合い方が必要だという。
こんな付き合いをするならば、こちらの人間性もすぐに見抜かれてしまうことになるだろう。社会部の記者とお付き合いするのは、広報マンの枠を超えて、それなりの覚悟が必要のようである。

神谷町の広報マン 愛称:マーベリック
外資系IT企業で広報マン17年、PR系企業におけるコンサルタント生活3年を経て、現在は神谷町にある金融会社にて広報を担当。広報マンとして20年余を過ごす。広報の仕事と、赤ワイン、クルマ、そして年に数回に過ごす軽井沢での静かな生活をこよなく愛する。独自の視点から広報を語り、広報の仕事に携わる後進の成長に貢献したいと考えている。


■神谷町ではたらく広報マンの独白

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