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神谷町ではたらく広報マンの独白(18)近くて遠きは広報とIR

公開日:2008年11月4日

企業は多様なステークホールダーに対して、日常的にコミュニケーションを行っている。その中でも、広報とIRはその重要な一角を構成している。広報とIRは、何が異なるのか・・・。
個別のコミュニケーション活動を区別するポイントは、どのようなステークホールダーを対象にするかであり、対象によってその呼び名も変わってくる。
たとえば、広く一般公衆を対象とするのがパブリック・リレーションズ(PR)、投資家を対象とするのがインベスタ・リレーションズ(IR)、そして従業員を相手にするのがエンプロイ・リレーションズ(社内広報)といった具合である。
ただ現実的には多くの企業(特に大企業)において、”広報”とはメディアを対象として展開する”メディア・リレーションズ”をさしている。不特定多数の一般公衆は、メディアを通したコミュニケーションが最も効率的、効果的と考えられていたためだ。
インターネットの発達により、企業の広報は大きく変わろうとしてはいるのだが、従来、”広報”という言葉は、暗黙のうちにメディアを対象とするコミュニケーション活動と位置づけられていたのである。
そんな”広報”において重要な課題は、会社の動向をメディアを対象に的確にわかりやすく伝え、いかにポジティブな記事として報道してもらうかだろう。
投資家への情報提供を任務とする証券系記者は別として、経済分野で活動する記者が求める情報は、企業において不断に発生するニュースだ。トップ人事、企業提携、M&A、新製品などのニュースを他新聞に先駆けて”特ダネ”として報道することが記者の最大ミッションだろう。
その記者を相手にして、企業の広報担当者は、インパクトのある記事としてとり上げてもらうかに腐心してきた。しかし最近では、単に企業の認知度やイメージの向上を図ることだけでなく、企業に出資している投資家の目を意識することが広報にとっても大きな課題となっている。
一方、IRの目的は会社に関する情報を、正確かつ速やかに開示することにより、適正な株価の形成、維持に務めること。そのため、決算発表や業績説明会等のコミュニケーション活動を実施し、会社の業績動向や成長性をいろいろな数字を交えて説明することがIRの大きな課題であった。
ところが2000年以降、米国でエンロンやパワードコムに代表される企業会計の不正が大問題となり、それが日本にも飛び火した。その結果、証券取引法や会社法が改正され、金融商品取引法が発効することにより、企業の情報開示にはより厳しい目が注がれる時代となった。
また、投資家が企業を評価する視点も、単に業績を表す数字だけでなく、企業や事業の戦略、環境やCSRへの取り組みなどに広がりつつある。

垣根が低くなった広報とIR

近年、企業において広報とIRに対する考え方は大きく変化しつつあり、IRと広報との垣根は低くなってきたように思われる。
IR活動においては業績を示す数字の開示は必須としても、会社の方向性を示すために事業戦略をはじめ、今や環境やCSRへの取り組み、研究開発の動向などについても投資家に知らせることは必須になった。
また、会社経営にとっても株主重視の傾向も強まったことから、広報も投資家の存在を意識したメッセージの発信が必要だ。記者発表会に証券アナリストを招いたり、決算説明会をメディアに公開する企業も多くなり、企業としても単一の組織で広報とIRを担当するほうが業務の効率を高められることは間違いない。
ところで最近、私は上場しているある関連会社の広報機能の立ち上げをサポートしている。
新任の担当者に向けた広報の研修を手始めとして、広報計画やニュースリリースの執筆、レビューなど広報に関する基本的な知識やスキルの移転を行ってきた。私が関わっているこの会社は以前より上場しており、IRや広告宣伝の機能はあったのだが、なぜだかメディアに対応する組織も機能も十分に存在していなかった。
ようやく広報の機能の必要性を経営者も認め、IRと同じ組織に専任者を置き広報活動に取組み始めたのだ。
ただ一つ気になっていることがある。
例えばニュースリリースの作成において、私は広報の立場から内容についてはニュース性を重視してアドバイスしている。発表タイミングの設定やニュースリリースの見出しのつけ方、ニュースとなるポイントをどのように工夫して表現するかに重要性をおいて作成するよう、口を酸っぱくしている。
投資家の存在も意識して、会社の成長性をメッセージするコメントを加えることも忘れてはいない。ところが、現場の人々の感覚と若干のずれがあることが気になってきた。

近くて遠きは広報とIR

IRの考え方が定着しているためなのだろうか?
発表のタイミングやニュースのポイントをリリースにどのように盛り込むかという観点よりも、具体的なファクトよりも営業報告書のように企業動向の解説でニュースリリースをまとめようという傾向を感じてしまう。
また、記者とのリレーションを活用して情報を提供し、時には記事も掲載してもらおうといった取組みにはあまり関心がなさそうだ。広報に長年の間、取組んできた立場からみると、心もとないと感じてしまうこともしばしばである。
広報とIRの垣根が低くなり、従来は対象として考慮しないで済んだステークホールダーを意識したコミュニケーションを行わざるをえないことは、時代変化の帰結なのだろう。
広報とIRを担当する組織を統合し、証券アナリストとメディアの記者を同時にカバーしようというのは、効率性を重視する企業としては当然のことにも思える。
しかし、ステークホールダーの特性の違いを見極めることなく、いずれかを対象とした方法と内容でカバーしようとすることは、適切なコミュニケーションとはいえないだろう。
“遠くて近きは男女の仲”だけど、”近くて遠きは広報とIR”なのである。単なる名称だけではない”広報・IR”のためには、今までにないコミュニケーション手法によるアプローチが重要に思われるのだ。
広報とIRの違いを意識して取り組んでいる”広報・IR部”が世の中にどれほどあるか、なかなか興味深いものである。

神谷町の広報マン 愛称:マーベリック
外資系IT企業で広報マン17年、PR系企業におけるコンサルタント生活3年を経て、現在は神谷町にある金融会社にて広報を担当。広報マンとして20年余を過ごす。広報の仕事と、赤ワイン、クルマ、そして年に数回に過ごす軽井沢での静かな生活をこよなく愛する。独自の視点から広報を語り、広報の仕事に携わる後進の成長に貢献したいと考えている。


■神谷町ではたらく広報マンの独白

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