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神谷町ではたらく広報マンの独白(5)買収ファンドが挑んだ広報的チャレンジ

公開日:2007年8月17日

■ファンド企業による画期的な記者会見

6月中旬のことだが、米ファンド大手スティール・パートナーズのウォレン・リヒテンシュタイン代表が都内で記者会見を行った。報道関係者が多数集まり、テレビや新聞でもかなりとり上げられた。同氏の記者会見は今回が世界初であり、同じ金融業界の広報の立場からみるとこれは極めて画期的だったのである。
リヒテンシュタイン氏のスティール・パートナーズは、ブルドックソースをはじめとした日本企業の買収(M&A)に名乗りを上げたファンド会社である。ファンドは投資家から資金を集め企業買収等で運用し、その収益を投資家へリターンするというビジネス(いわゆるファンド・ビジネス)を行う。同社が国内で運用する金額は数千億円に上ると言われており、強引な敵対的買収の手法もとるため、ターゲットとされた企業は穏やかではない。
一般に敵対的買収は周到な調査と準備を行い、秘密裏に進められる。密かに株式を買い集める時点ではほとんどその行為が明るみに出ない。日本では一社の株式の取得が一定の比率を超えると大量保有について財務局への報告が義務付けられており、報告がなされた時点で世の中にその企てが知られることになる。ファンドにとってこれは、ビジネスにマイナス効果となる。すなわち密かに活動を進めたいファンドにとっては、認知度や知名度の向上はむしろ邪魔なのだ。

■ファンド会社はいまだに”ハゲタカ”

かつては、企業買収というと経営難に陥った会社がやむなく他社に支援を仰ぎ、株式と経営権を譲渡することが多かった。しかし、今はそうではなく、資金的に余裕がある会社がてっとり早く自社の事業の拡張をはかるために、市場で株式の強引な取得をはかる公開買付けが増えているのだ。最近は強引な敵対的買収も目立ってきている。
ただ、今の日本で敵対的買収は決して好意的には受け止められない。かつて経営難に陥った日本長期信用銀行の再建が米系のファンドに引き受けられたとき、ファンドに有利な条件があったことから世論はハゲタカによる買収劇として批判的に報じた。しかし見方を変えると、その経営は合法的であり、日本の金融機関が見限ったなかであえてリスクをとった結果なのだ。結果的に長銀は新生銀行として再建を果たし、経済社会に返り咲いた。ファンドがリスクの見返りとして大きな利益を上げたのは、いうまでもない。
しかし長銀を買収したファンドは、沈黙を続けたため何年もたった今でもハゲタカと揶揄され、いまだに日本で市民権を得た存在とはなっていない。欧米での感覚を当然として日本でビジネスを進め、自身を認知させる努力を怠った帰結に他ならない。

■記者会見のねらいと結果

 スティール・パートナーズが世界で初めての記者会見を開催したのは、そういったファンドの問題を認識し、自社と事業に対する社会の理解を得ようとした試みに思われる。特に、買収防衛策を審議する株主総会のシーズンを目前として、自社のビジネスの正当性を広報的に主張し、少しでも多くの株主の賛同を得たかったのではないだろうか。
もっとも、記者会見の目的は”日本企業の経営者の教育のため”と言ったリヒテンシュタイン代表のコメントぶりをみると、会見は決して成功したとは言えないだろう。欧米における経済社会の常識をストレートに持ち込んでも、率直にそれを受け入れるほど日本社会は成熟していないのだ。
唯一、敢えて記者会見に臨み、日本社会の理解を得ようとしたチャレンジについては、同じ金融業界の広報として積極的に評価したいとは思っている。

神谷町の広報マン 愛称:マーベリック
外資系IT企業で広報マン17年、PR系企業におけるコンサルタント生活3年を経て、現在は神谷町にある金融会社にて広報を担当。広報マンとして20年余を過ごす。広報の仕事と、赤ワイン、クルマ、そして年に数回に過ごす軽井沢での静かな生活をこよなく愛する。独自の視点から広報を語り、広報の仕事に携わる後進の成長に貢献したいと考えている。


■神谷町ではたらく広報マンの独白

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