コラム

広報・マーケティング担当者がネットPRについて学べる連載コラム

企業WEBサイトの危機管理事例

2007年04月26日

news2u:tomioka


企業WEBサイトの危機管理事例

緊急対応用WEBサイト「シャドーサイト」の効用

クロスメディア・コミュニケーションズ
代表取締役 雨宮 和弘氏

 今回から3回でオンライン(WEB)における企業の危機対応についてお話しする機会をいただいた。「期限切れ材料不正使用」や「ホテルグループの耐震偽装問題」など今年に入っても企業の不祥事が目立つが、「コーポレートガバナンス」や「行動規範」の緩みに起因する例が多く、それが顕在化し目立つようになった経緯にインターネットがあるのは明白だ。噂から口コミへ、そして追い討ちをかける内部告発。企業の不利益情報の伝播はネットによってスピードアップしている。


 危機管理は、事前の準備としての「リスクマネジメント」と発生後の対応策である「クライシスマネジメント」に大別されるが、今回紹介する「シャドーサイト」は前段の「リスクマネジメント」の一環と言うことができる。
「リスクマネジメント」を考える第一歩は、まず自社のビジネスや経済活動にどのようなリスクが存在するかを洗い出すことだ。たとえば地震や洪水など災害による影響や脱線や墜落、工場の爆発のような事故、さらには停電などによるサービスの供給停止、製品出荷後の設計ミスや経年変化による事故や不良の発生、操作ミスや人為的な犯罪による情報漏洩・流出などがある。

 ほんの10年ほど前までは、企業にこれらの社会的な影響を及ぼす問題が発生しても報道機関に対する対応が取れていればほぼ問題はなかった。しかし現在では企業におけるこれらの事象を知るのは報道機関からだけとは限らず、むしろコミュニティサイトやブログサイトなどから携帯電話のネットビューイング機能やメール機能を通じて知る場合が多くなってきている(こちらのほうが情報流通のスピードが早い)。そしてそこで知りえた情報の検証のために企業WEBサイトを訪れるのだ。


 さて、管理側に目を転じてみると、現在の企業WEBサイトの管理、戦略、マネジメントを全権的に見る企業広報やコミュニケーション担当者を置いている企業はまだ少なく、多くの場合プレスリリースなど一部の情報の更新を担っているに過ぎない。仮に危機が発生しても「What's New」に記事リンクが載り、クリックすると報道用の対応コメントが書かれたPDF(アクロバット)ファイルが立ち上がるなどにとどまる場合がほとんどだ。

 しかし企業WEBサイトのトップページが「ハレ」のまま、一部に「ケ」の情報を表示しても、企業の姿勢を体現することはできず、多くの情報があふれるトップページの中でユーザーがその情報を探さなければならないと言う苦痛を与えかねない。


 シャドーサイトは、いわば想定されるリスクへの対応表現に特化したインターフェイスをもつWEBページで、「ハレ」を伏せ、ユーザーに必要な情報のみを「ケ」にふさわしく速やかに伝えるために設計されたものだ。実際に私たちが目にする機会は多くはないが、有名な例としては2004年3月に入り口の回転扉で小学生の死亡事故を起こした六本木ヒルズ(森ビル)がある。この時はWEBサイトトップの大半を占めるフラッシュ(動画)によるトピック紹介をすべて撤去し、その部分を一枚の白い画像ファイルとし、「六本木ヒルズ森タワー入り口扉で発生いたしました事故につきまして」というリンクを真ん中に目立つように置いた。これにより、1クリックですぐにその情報ページに行くことが可能になっており、そのページでは「起きた事実」、「現在の状況(企業の立場)」、「今後の対応」、さらに「各種の連絡先」が簡潔にリストされていた。

 また、全面的なシャドーサイトとしては2004年10月に発生した中越地震直後の日本道路公団(現:東日本高速道路株式会社)が挙げられる。通常はルートマップや料金情報、季節の見所などの情報が満載だが、地震発生後に速やかに切り替えられたシャドーサイトにはユーザーが一番知りたい情報、すなわちどの区間で不通・徐行運転なのか、あるいは今後の見通しと言った情報のみが開示されていた。もちろん通常のWEBサイトのトップページへのリンクも最下段に表示されていたが、きわめて端的に整理されており、利便性の高い対応だった。


 シャドーサイトの体裁や内容は定型のヒナ型があるわけではないが、他社の対応事例に学びつつ、普段より自社の想定リスクから十分な対応が取れるような内容を策定するなどの準備を整えておくことが肝要だ。

編集部後記

次回のテーマは「不祥事対応~継続の視点」。
危機対応時にユーザーが望むポイントにどう応えるか、具体的な成功例からそのヒントを教えていただきます。

 

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2007年05月18日 13:02
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