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ネット発の「書き時計」の大反響に大学広報はどう対応したか?東北芸術工科大学の担当者に聞きました

公開日:2016年4月12日

ネット発の「書き時計」の大反響に大学広報はどう対応したか? ~東北芸術工科大学の担当者に聞きました

ソーシャルメディアで自社の話題がバズったとき、広報担当はどう対応すればいいのか?

さまざまなケースがあるため一概に「これが正解」とは言えませんが、ポジティブな事例のひとつとして、2016年2月に学生がTwitterに投稿した卒業制作の「書き時計」(正式作品名:Plock[プロック])が大反響を呼んだ東北芸術工科大学のご担当者様に、当時の広報現場についてお話を伺いました。

お話を伺った方
滝口慶太氏 東北芸術工科大学 入学広報課(※2016年3月時点)

Yahoo!リアルタイム検索の通知で2時間後には情報をキャッチ

──ネットで「書き時計」が話題になっているのを知ったのは、いつ、どのようにでしたか?

滝口氏(以下、敬称略):制作した学生がTwitterに「書き時計」の動画を投稿したのが2月7日の16時頃。日曜日で大学は休みでしたので私は家にいて、たまたま18時ぐらいにネットを見たらYahoo!のリアルタイム検索の通知がきていました。滅多にはないんですが、大学の先生がテレビ出演したときなどに大学名が注目ワードに上ることがあるので、キーワード登録していまして。当日は、その時点ですでに1万5千以上リツイートされていた記憶があります。

書き時計

書き時計(photo by TOHOKU UNIVERSITY OF ART & DESIGN)

──大学の話題でバズが起きたときの対策は、事前に決められていましたか?

滝口:今回の件は、いわゆる危機管理ともちょっと違って、対応に関してはまったくの手探りでした。翌日どのように対応するか、大まかなプランは日曜の夜に考え、月曜の朝8時頃には大学の上層部や彼の担当教員と話し合い、これからメディア対応をお願いする可能性がある旨を本人に伝えてもらったのが一つ。もう一つは、朝イチで広報のスタッフに、メディアに提供できる写真と動画を撮ってもらいました。

「書き時計」の動画は、本学のキャンパス(山形市)で2月9日(火)から開催される「卒業/修了研究・制作展」の一般公開前々日となる7日日曜日に投稿され、8日月曜日は学校関係者だけの内覧日だったので、多少余裕を持って対応の準備ができたのはタイミング的に助かりましたね(笑)

──バズが起きた翌日のメディア対応では、どのようなことを行いましたか?

滝口:地元の山形新聞さんが午前中すぐに取材と動画撮影にいらしたのと、学生が宮城県の出身なので、河北新報さんにちょうど別件でご連絡差し上げたついでにお話してすぐに来ていただきました。それから9時半ぐらいにwithnews(ウィズニュース)さんから電話をいただき、本人に電話取材をして昼までに記事を上げたいというお話だったので、学生へつないで写真はこちらが用意したものを提供しました。その記事をきっかけにバズがさらに加速して、NHKさんからも夜の「NEWS WEB」で放送したいとご連絡いただき、朝撮影した動画を提供してその日じゅうに放送されたのが月曜日の流れです。

写真に関しては、朝イチで撮ったものだけでなく、大学のパンフレット用に卒業制作の過程を写真に収めていた中に、たまたま彼の制作中の様子が何枚かあったので助かりました。

制作中の様子

制作中の様子(photo by TOHOKU UNIVERSITY OF ART & DESIGN)

卒展の来場者は例年の約3倍近くに

──卒展の来場者数も、かなり増えたのではないでしょうか。

滝口:例年5,000人ぐらいだったのが、今年は1万4,000人ほどでした。駐車場に入るのに1時間待ちになるなど大学側も初めての体験ばかりでした。来場者は毎年地元の方が多いのですが、名古屋から時計を見にいらした方や、中には「僕が商標登録してあげるから」と名刺を置いていかれる方も。でも意匠等の登録は常日頃の授業でも学生に指導しています。

──マスコミの取材は、最終的にどのくらいになりましたか?

滝口:山形の地方局はNHK山形を含め全局。テレビのキー局は民放4局とNHKさん。番組名で言うと、「めざましテレビ」が土日の2日間来てくださって、それから「月曜から夜ふかし」と「Nスタ」、あとは大学が提供した画像・動画や、地方局が撮った映像を使って紹介してくれる形で「とくダネ!」「スーパーニュース」「スッキリ!!」「サンデーモーニング」等々、本当にたくさんのメディアで取り上げていただきました。とはいえ、現状まだすべて整理しきれていないのですが。

マスコミ対応では投稿した学生の負担軽減を配慮

──本当にものすごい反響だったんですね。

書き時計

書き時計(photo by TOHOKU UNIVERSITY OF ART & DESIGN)

滝口:ですから今回最も気をつけたのは、「書き時計」を制作した学生本人に負担をかけすぎないことでした。やはり大学としては学生を守らなければいけませんので。本人に直接話を聞きたいというご依頼が殺到しましたが、彼に取材が集中しすぎないよう、ある程度のことは広報スタッフでお答えできる体制にしたり、Twitterなどで本人に直接依頼が来たときの返信用の定型文をこちらで用意して、必ず大学に連絡してもらうようにしていました。

本学には第一線で活躍する現役のメディア関係者やクリエイターの方々が教員に大勢いますので、イザというときは相談できる安心感はありました。今回も広報部長で企画構想学科准教授の片岡(※企画家・コラムニスト・戦略PRプロデューサーの片岡英彦氏)に報告と相談はしていましたので。特にバラエティ番組に取り上げていただく際の線引きのバランスと言いますか、許容できる脱線の按配のようなことは片岡とも話し合いました。

──「書き時計」が話題になって、地元での大学の評価などに変化はありましたか?

滝口:地元のメディアでは毎日のように芸工大(※東北芸術工科大学の地元での呼び名)のニュースが出ているので、特別に注目が高まるようなことはなかったんです。ところが今回、キー局で地元の大学が紹介されているのを観て、黒船効果で改めて見直されたというのはあると思います。キー局でテレビ放送されるたびに、「ネットで見たこの時計は、芸工大だったのか!」という驚きの声が、地元の方からよく聞こえてきました。ネットのソーシャルメディアで一気に広まった話題ではありますが、そういう意味ではやはり従来からのマスコミの力はものすごく大きいということを改めて感じました。

──2月9日(火)~14日(日)の山形キャンパスでの卒展終了後、2月23日(火)~28日(日)東京都美術館で開かれた美術科の卒業制作展で再展示しました。その決定はすぐに行われたのですか?

滝口:東京で開かれた卒展は、芸術学部美術科(日本画・洋画・版画・彫刻・工芸・テキスタイル・総合美術)が対象で、「書き時計」を制作した学生が所属するデザイン工学部の作品は本来展示しないのですが、再展示する話は山形展開催中の早い段階で行われていました。というのも、「東京でも見られますか?」という問い合わせの電話が鳴り止まなかったので。美術科の学生たちも「彼は作品の力でたくさんの人の心を惹きつけたのだから」と快く承諾してくれました。

東京展での再展示では実演時間をリリースで事前告知

──東京展での再展示は、「News2uリリース」でも告知されました。

ネット上で大きな話題となった卒業制作作品「書き時計」を2月23-28日に東京都美術館で再展示|東北芸術工科大学のニュースリリース

東北芸術工科大学のニュースリリース(2016年02月18日)ネット上で大きな話題となった卒業制作作品「書き時計」を2月23-28日に東京都美術館で再展示

滝口:地元メディアには直接告知を流しましたが、東京圏に対してどのように伝えようかということで、ニュースリリースを出させていただきました。Webメディアが取り上げてくれたり、インフルエンサーの方がTwitterでリツイートしてくれたりして認知の効果はあったと思います。リリースには「書き時計」の会期中の実演時間の予定も記載しました。あの時計は彼でないと動かせないので、本人の負担を減らすために書いておいたのですが、リリースで事前にスケジュールも広められたのは結果的に非常に良かったです。

他の学生や他大学の卒業制作にも取材の波及効果が

──「書き時計」が話題になったことで、大学の認知やメディアリレーションにどのような変化がありましたか?

滝口:地元での認知に関しては、東京のテレビ局で取り上げていただいたことで、地元の人たちが大学を再評価してくれたというのが大きいですね。メディアリレーションでは、今までつながりがなかったたくさんのメディアの方々とつながりを持つことができましたし、さまざまな波及効果もありました。

「書き時計」とともに他の卒業生の作品も取材していただいて、その中のある作品が企業の目に留まって商品化の話が具体化したり、また別の学生はメディアから卒業後もぜひ取材をさせて欲しいとお話があったり。「めざましテレビ」では、美大の卒業制作が大変面白いからぜひコーナー化したいと、他の芸術系・美術系大学への取材へと広がっていきました。本学だけにとどまらず、他の大学も含めて美大の卒業制作そのものにメディアが注目するひとつのきっかけになったのは嬉しいですね。

スタッフの情報共有と協力体制を日頃から整えておくことの大切さを実感

──ネットで突然バズが起きたことによるこのたびの広報対応を振り返って、浮かび上がった今後の課題などはありますか?

東北芸術工科大学 滝口慶太氏

滝口:今回たまたまバズが起きたのが日曜日で、かなり早い段階でネットの動きをキャッチでき、事前の心構えと準備の時間が持てたのは幸いでした。これがもし平日の昼間で、メディアからの問い合わせで初めて知ったという順序だったら、とても対応が追いつかなかったと思います。広報スタッフや上層部を含め、ソーシャルメディアに明るい方ばかりではないですので、ネットの動きを日頃どのようにチェックして情報を共有しておくかは課題のひとつですね。

広報体制としては、このたびのような大きな動きがあったときにヘルプしてもらえる人員が確保できるかも考えさせられました。本学では入学広報課の4人が他業務と合わせてWeb運営やメディア対応を担当しています。4人いたからなんとか回せましたが、広報担当が1人か2人という大学や企業でバズったらとても回せないと思います。2-3月で通常業務だけでも多忙な年度末に、希望にはできるだけ応じようと取材が一日に5社重なったりして、それに対応しつつ事務局にはその間も問い合わせの電話がひっきりなしに来る。そんな状況でしたので。日頃から部署内はもちろん、他部署の人たちとも業務の平準化や情報共有を意識的に行っておくことが必要かもしれないと思いました。

また私たち入学広報課は、ネットを通じてこれから大学受験を迎える高校生にいかにリーチするかを常に探っています。高校への出張説明会などを通じて、「書き時計」の話題をどのように知ったかアンケートを取るなどして、高校生がネットで情報をどのように取り入れているかこれから探ってみたいとも考えています。

滝口様、貴重なお話をいただき、ありがとうございました。

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